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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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アジャイルマーケターの挑戦(AD)

誰もがパパッと仮説検証、上位有料プランへの移行率約5倍を実現したNewsPicksの戦術

 サブスクビジネスにおいて、顧客の有料会員化を促し、長く良好な関係を構築しながらLTVを高めていくことは非常に重要だ。しかし、顧客のモーメントを把握し継続的なコミュニケーションをとるには様々な課題がある。NewsPicksはカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「Braze」を活用することで、LTV向上施策のPDCA強化を図っている。実際の活用法や効果をマーケティング担当者やエンジニアなど4名に伺った。

LTV向上に重要な3つの視点

MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは皆さまが担っているミッションと、Braze活用においてどのような役割を担当されているのか教えてください。

菊地:私はマーケティング全体を統括しています。ミッションはNewsPicksの新規会員獲得で、テレビCMなどのマスマーケティングから、アプリインストール広告やリスティング広告などのデジタルまで見ています。また、新規会員獲得後はユーザーとのエンゲージメントを高めていく必要があるため、私たちマーケティングチームが主導してBrazeを導入した経緯があります。

株式会社ニューズピックス マーケティングチーム マネージャー 菊地 幸司氏
株式会社ニューズピックス マーケティングチーム マネージャー 菊地 幸司氏

岩田:私も新規会員獲得に関わっています。今、力を入れているのは学生さんの会員獲得です。Brazeを使って、ターゲティングしたインアップメッセージやプッシュ配信に取り組んでいます。

桐畑:私はエンジニアとして、デザイナーやプロダクトマネージャーとともにプロダクトのチームに所属しています。会員獲得の後のリテンション向上と、有料会員化をミッションにしているチームです。

間正:私は有料課金事業部の企画管理チームに所属しています。アプリ内外から有料会員になっていただくためにマーケティング施策を企画し実行しています。また、マネタイズや事業開発なども担うチームです。

MZ:様々な部署でBrazeを活用されているのですね。会員獲得から有料会員化してユーザーを育てることが一つのミッションかと思います。LTVを高めるためにNewsPicksとして大切にされていることはありますか?

菊地:第一にメディアとしてユーザーが読みたいコンテンツがあることが重要です。そこは、コンテンツやキュレーションによって一定の質を担保して、成長してきました。

 LTV向上の観点では、無料会員のリテンションの伸長と、有料会員の増加(課金コンバージョン)、あとは課金後のチャーン(解約)減少の3つが鍵です。課金コンバージョンに関しては桐畑が2021年から力を入れていて、今はさらにリテンションのための施策にも取り組もうとしています。また、チャーン減少に関しては全社横断のプロジェクトがあり、その中でも間正のプレミアム事業部で注力してきました。

柔軟なフィルタリングと権限設定で

MZ:そういった取り組みを重視する中、Brazeを選ばれた理由は何でしょうか。

菊地:NewsPicksのアプリ上にも購読履歴に合わせたフィードが流れてくるパーソナライズ機能はありますが、アドホックにユーザーとエンゲージメントできたらいいなと思ったのがBraze導入のきっかけです。

 例えば、ユーザーが課金せず離脱した有料コンテンツを再度表示すると、課金コンバージョンが向上した事例があります。これは機械学習のレコメンドというよりユーザーとのコミュニケーションですね。

 以前導入していたツールだと、こうしたコミュニケーション改善施策をする時に条件設定が複雑でした。さらに、NewsPicksはBtoC・BtoB向けにそれぞれサービスを提供しているので、意図しないユーザーに誤ったメッセージを配信する事故を防ぐ必要があります。そのため、私ともう一人しかツールに触らないようにしていました。結果的に、腰が重くなり実施に至らない施策も多かったのです。

 Brazeはかなり柔軟にデータをフィルタリングでき、権限管理も設定できるので、施策担当者自身がツールを使用できます。施策実行のハードルが下がったので、仮説をすぐに施策に落とせるようになりました。

Brazeはフィルターの設定も柔軟に行える
Brazeはフィルターの設定も柔軟に行える

 一方で、当社がユーザー体験で大事にしているのが「出しすぎない」こと。エンゲージメントツールでの通知はあまり頻度が多いとスパムになってしまうため、同じユーザーに1日1回までしか表示しないといったルールを決めています。

リアルタイムなデータを扱い、仮説検証が高速に

MZ:岩田さんはBrazeを活用してどのような施策をされているのでしょうか?

岩田:NewsPicksのユーザーの多くは社会人ですが、昨年の11月から学生向けに「学生生活・進路タブ」というカテゴリを運用しており、そこへの誘導施策を行っています。また、学生さんは学割でプレミアムサービスが500円で使用できます。この認知拡大の施策にもBrazeを活用しています。

同社 マーケティングチーム マーケティングプランナー 岩田 真由子氏
同社 マーケティングチーム マーケティングプランナー 岩田 真由子氏

 始めたばかりの施策なので、今後PDCAを回しながら効果を上げていきたいですね。Brazeを使うと、企画から実行までは最短で1週間ほどです。既にクリエイティブがある場合は、その日に実施することもできています。

菊地:このスピード感はBrazeを導入してからですね。以前はちょっと複雑な条件を設定しようとすると、データの準備に工数がかかりました。データをツールに合わせなければならなかったのです。今はBrazeにデータを渡せばツール上でいかようにもできます。

MZ:桐畑さんの取り組みはいかがでしょうか。

桐畑:開発ではLTV向上を目的として、そもそもどういったユーザーが継続利用しているのかを検証するためにBrazeを活用しています。

同社 プロダクト開発チーム アプリケーションユニット リーダー 桐畑 数寿氏
同社 プロダクト開発チーム アプリケーションユニット リーダー 桐畑 数寿氏

 例えば会員になったばかりのユーザー向けにA/Bテストを実施しています。A群には最初にオンボーディングの記事を表示し、B群には何も出さない形にして、どのぐらい数字が変わっているかを見ます。結果はBrazeの管理画面上でビジュアライズされるので、仮説を迅速に検証するのに役立っていますね。

 そうした中で効果的だと実証できた施策として、「有料コンテンツの購読画面まで行って購読画面を閉じたユーザーに再度アプリ内ダイアログでおすすめする施策」などがあります。今までアプリ内ダイアログは出来る限り簡素なものを利用していました。というのもダイアログをカスタムで作ることは、端末の画面サイズに合わせて動作確認するのが難儀で、あまり行っていなかったんです。Brazeではダイアログを作った際に自分のユーザーIDを入れてテストを押せば自分の端末上で確認できるので、カスタマイズしたダイアログの動作確認が簡単にできます。

 セグメントサイズの計算もかなり正確で感動しましたね。通知を許諾しているユーザーのデータも、リアルタイムに正確に連携されるんです。以前は時間差があってテンポ良くできなかったのがストレスでしたから、大きなメリットを感じます。

年割プランへの移行が5倍に増加

MZ:プレミアム事業部ではどのようにご活用されているのでしょうか。

間正:有料会員獲得を目的に、無料会員に過去のコンテンツをおすすめとしてダイアログ表示して課金・購読につなげる施策を行っています。私は2022年の1月に入社したばかりですが、Brazeは操作しやすくすぐキャッチアップできました。今年の2月から3月で2倍の有料会員を獲得できているので、PDCAを回すほど成果が出ると実感しています。

同社プレミアム事業部 プランニング&アドミニストレーションチーム コンテンツマーケター 間正 麻友美氏
同社プレミアム事業部 プランニング&アドミニストレーションチーム コンテンツマーケター 間正 麻友美氏

MZ:お三方とも様々な施策に挑戦されていますね。Brazeを導入する際には、どのような流れで導入し、社内に浸透させていったのでしょうか。

菊地:2021年に、まずはプレミアム事業部で新規会員獲得のための施策として、以前のツールからリプレースする形で導入し、うまくいったので他部署にも広げていきました。次に取り組んだものが、チャーンを減らす施策ですね。当社の有料サービスには月額プランと年割プランがあるのですが、後者に移行したユーザーのほうがチャーンレートは下がります。

NewsPicksプレミアムのプラン
NewsPicksプレミアムのプラン

 そこでBrazeを活用して、月額プランのユーザー向けに更新の約10日前に年割プランを案内しました。すると年額に移行してくれるユーザーが3~5倍ほど増えたんです。

 更新時期はユーザーによって異なるため通知のタイミングが難しく、従来は数か月に一度全体にアプリ内ダイアログを出すだけでした。それがBraze導入後、各ユーザーの契約開始のデータを渡すだけで次の更新日が自動的に設定できるようになったので、実現できた施策です。

各チームが自由にやるのがNewsPicks流

MZ:ちなみに、他にもBrazeを活用しているチームはあるのでしょうか?

菊地:書籍出版の部署はNewsPicksのユーザー向けに書籍のお知らせを表示するのに活用しています。またコミュニティチームは、プロピッカーやピッカーに対してBrazeでコミュニケーションをとる施策を行っています。

 当社はNewsPicksという大きなプロダクトとしては一つで、デザインのトンマナも合わせていますが、マーケティングは集約せずそれぞれの部署に権限委譲して取り組んでいます。やりたいことを各部署で考えて実行できる「緩やかな連携」を組んでいるイメージですね。

MZ:部署によって多様なメッセージでアプローチすると、ユーザーから見たらバラバラに感じる懸念はないのでしょうか。

菊地:登録して何日目にトライアルをして、何日目に課金を促して……とジャーニーが決まったプロダクトの場合はメッセージも統一するほうがいいと思います。しかし、NewsPicksのプラットフォームの中には様々なサービスがあり、ユーザーによって便益と感じるポイントは異なります。ですから、今の運用で問題は感じていません。

NewsPicksのサービス群
NewsPicksのサービス群

MZ:先程、「出しすぎない」ことが重要だとおっしゃっていました。Brazeで締めるべきところを締めているからこそ、様々なチームが自由に活用できている印象を受けました。

菊地:まさにそうです。我々は、まずはトライしてみて、そこから発見するというスタンスを持っています。ユーザーにも自社にもデメリットにならないのであれば、一度やってみて得られたものを次につなげていく。そのPDCAを速く回していきたい。各部署がそれぞれに試行錯誤できる環境がBrazeのおかげで整ったと思います。

Brazeでパパッと検証を当たり前に

MZ:最後に、今後LTV向上やエンゲージメント強化についてどのようなお取り組みをお考えでしょうか。

岩田:学生さんにもいろいろな方がいらっしゃるので、今後セグメントを細分化してクリエイティブに反映していけたらと思います。就活や卒業といった学生ならではのタイムラインに合わせたパーソナライズを高めていきたいですね。Brazeですぐに施策が検証できるので、社会人と学生の反応の違いや、学生の中でもセグメントごとの反応をしっかり見ていきたいと思います。

桐畑:今はインアップメッセージを中心に活用していますが、まだまだ使いきれてない機能もあります。ダイアログに慣れてきたユーザーはすぐに消してしまうので、自然にフィードの中で見せる方法をとると効果が高そうだと思っていて。そういった機能の連携や、自社のデータとも連携してダッシュボードを整理していきたいですね。

間正:私はユーザー体験を良くしていくために、セグメントをより細分化して適切なコンテンツをおすすめしたいです。「この記事を読んだユーザー」といったセグメントも、Braze上に記事IDを入力するだけと簡単なんです。中期的な観点では、せっかく有料会員になってくださったユーザーに、適切なタイミングでおすすめを表示することで継続率を高めるところにもチャレンジしたいですね。

MZ:最後に、今後のBraze活用をどう展開していかれるかも伺えればと思います。

菊地:ユーザーとの接点に関してはBrazeで統一する方向を目指しています。統一することで社員の学習コストも下がり、事故も起きにくくなると思います。もう一つは、Brazeが水や空気みたいに当たり前の環境になること。エクセルやパワーポイントを使うのに意気込む人はいませんよね。それと同じくらい、普段からBrazeをパパっと使って仮説検証して、次の新しい施策につなげられる環境が実現できたらと思います。

MZ:本日はありがとうございました。

カスタマーエンゲージメントの最先端を体験!

「FORGE Japan 2022」画像

 

 2022年7月12日、Braze主催のスペシャルイベント「FORGE Japan 2022」が日本で初めて開催されます。
 最新のリアルタイムマーケティングを体験するプログラムから、Braze CEO 兼 創業者ビル・マグヌソンによるキーノート、日本の最新事例、レセプションパーティなどスペシャルな「体験」をお届け!
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※Braze社のページに遷移します。

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この記事の著者

尾高 志保(オダカ シホ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/05/23 11:00 https://markezine.jp/article/detail/38781