「リアル店舗の価値」が、セブン-イレブンにしかない優位性を作る
――直近の出来事として、2022年3月にマーケティング部が新設されました。この部門は、全社の中でどのようなミッションを担っていくのでしょうか?
マーケティング部は、「販売促進部」の名称を変更する形で新設した部門です。実態としては、マス広告やSNS施策、販促物の展開などを担う「プロモーション・広告企画部」、アプリの運営・活用を担う「デジタル販売促進部」、過去・現在・未来の市場調査を行う「マーケティング部」の3つのチームに分かれています。
コロナ禍に限らず、お客様の思考は時と共にどんどん変化していきます。マーケティングの定義が「売れる仕組み作り」であるとすれば、マーケティング部のミッションは、5年後も10年後も、お客様のニーズを先取りして、商品開発×プロモーションを打ち出していくことにあります。お客様にとって魅力的な商品を開発して、店頭に並べ、プロモーションを丁寧に行えば、売れる仕組みは作れるはずです。これを引っ張っていくのが、マーケティング部であると思っています。
――リテール事業においては、この2年でこれまでの価値基準が一気に変化しました。これを踏まえ、最後に展望をお聞かせ下さい。
出前サービスを筆頭に、コロナ禍で消費者は「届けてくれる世界」に慣れました。我々も、「来店していただくのが当たり前の世界」ではなく、「お届けするのが当たり前の世界」になっていく可能性があると捉えています。極端にどちらか一方の世界になることはないと思いますが、確実にセブン-イレブンのビジネスともバッティングする世界であると言えるでしょう。
よって、これから先はお届けするサービスの重要性が増してくると考えています。実際に、2021年3月から5年間の中計経営計画の中で「ラストワンマイルDXプラットフォーム」の構築を掲げており、ネットコンビニ「7NOW」の対応店舗は都心を中心に拡大中で現在約1,200店舗まで増えています。配達事業が、現在もこの先も注力領域であることは間違いありません。
よく、リアル店舗とラストワンマイルの共存について問われますが、お客様の支持を得られなければ成功しないという点は同じだと考えています。やはり、セブンイレブンの強みは、全国21,000店舗を超える店舗網があってこそです。全国のこれだけの店舗に商品が並んでいる安心感や信頼感。そして、その地域のコミュニティの中で愛されている加盟店のオーナー様――これは、大手ECサイトにも、出前サービス各社にもないものです。逆に言うと、これがあるからこそ、ラストワンマイルの構想が成り立つとも言えるでしょう。
定期誌『MarkeZine』76号 特集:リテール最新動向
第1回:「顧客体験価値の向上」を共通ゴールにしよう。『小売DX大全』著者からの提言
第2回:鍵は「UXへの落とし込み」リテールビジネスの今後を消費者調査から紐解く
第3回:半歩先の進化が、より良い顧客体験に ユナイテッドアローズのEC・アプリのリニューアルから学ぶべきこと
第4回:「セブン-イレブンアプリ」で高まる店舗体験とその先にあるラストワンマイル構想(本記事)
第5回:業界キーパーソンに聞くイチオシの買い物体験
第6回:買い物体験を豊かにする、最新リテールテック
第7回:リテールテックで店頭体験は進化する──量販店などで導入広がる「リモート接客」の可能性