定期誌『MarkeZine』76号 特集:リテール最新動向
第1回:「顧客体験価値の向上」を共通ゴールにしよう。『小売DX大全』著者からの提言
第2回:鍵は「UXへの落とし込み」リテールビジネスの今後を消費者調査から紐解く
第3回:半歩先の進化が、より良い顧客体験に ユナイテッドアローズのEC・アプリのリニューアルから学ぶべきこと
第4回:「セブン-イレブンアプリ」で高まる店舗体験とその先にあるラストワンマイル構想(本記事)
第5回:業界キーパーソンに聞くイチオシの買い物体験
第6回:買い物体験を豊かにする、最新リテールテック
第7回:リテールテックで店頭体験は進化する──量販店などで導入広がる「リモート接客」の可能性
コロナ禍で「コンビニの使われ方」の変化が加速
株式会社セブン-イレブン・ジャパン 商品本部 マーケティング部
総括マネジャー 福島 一晃(ふくしま・かずてる)氏1995年に中途入社。店舗勤務、店舗経営相談員を経て地区の責任 者として営業マネジメントに従事。2020年3月より、販売促進部(現 マーケティング部)の総括マネジャーとして、セブン-イレブンの店頭プロ モーション、アプリプロモーション全般を指揮。
――はじめに、コロナ禍でセブン-イレブンの顧客の消費行動にどのような変化があったか。セブン&アイグループ共通の会員基盤である7iDのデータからわかることを教えて下さい。
セブン-イレブンにおいても、コロナ禍でお客様の消費行動には明らかな変化がありました。コロナ前は、通勤の途中にコンビニに立ち寄ったり、会社の近くにあるコンビニで昼食を買ったり、会社から家に帰る途中でまた立ち寄ったり。また、休日にお出かけをする際も、行楽地へ行くまでの道中に見つけたコンビニで必要なものを買ったり。何かをする、どこかに行く「ついでに」使われることが多かったのですが、コロナ禍になり、通勤やレジャーなどで人が動く機会そのものが激減しました。
これを受けて変化したのが、1人のお客様が利用する店舗の数と、店舗での購買内容です。まずお客様が利用する店舗の数については、1〜2店舗のみを使うお客様が格段に増えました。データで言うと、1店舗だけ使うお客様の層が約1割程度増加しています。次に店舗での購買内容について。コロナ禍で顕著に伸びたのは、サラダ、冷凍食品、アルコール飲料、スイーツなどの項目です。わかりやすく言うと、スーパーでまとめ買いをする時のような購買のされ方が強くなりました。
よって、お客様が利用する店舗の数は減少したのですが、1人当たりの購入単価とお買い上げになる商品の点数は、共に跳ね上がっています。
ただ、実はこうした動きは、10年ほど前から現れていました。コロナ禍で突然起きた変化ではなく、コロナ禍によってお客様の変化が急激に加速したというのが、正しい捉え方であると考えています。
――10年前から兆候があったとなると、コロナ禍だけが変化の原因ではないと言えます。どのような理由による変化なのか、仮説はありますか?
昔は、コンビニの価値は「開いていて良かった」というところにありました。したがって、「ついでに」の使われ方をされていたわけですが、そうではなく目的をもってご来店いただけるように、セブン-イレブンの使われ方を少し変えていこうという取り組みを進めてきました。「近くて便利」のコピーやセブンプレミアムシリーズのニーズが高まってきたのが、ちょうどこの時期です。品揃えを充実させるなどの我々の動きと、お客様のコンビニの利用方法に関する変化が少しずつリンクしていき、コロナ禍で一気にそれが加速したのではないでしょうか。
――そうなると、一店舗ごとの重要性がさらに高まりますね。
そうですね。我々はフランチャイズビジネスであることもあり、創業以来の基本的なスタンスとして、すべての店舗のレベルを一定水準以上に保つための統一パッケージを強化するということをやってきました。ですが、データで店舗の使われ方が可視化されるようになったことで、店舗ごとの差異が浮き彫りになっています。各店舗の使われ方に合わせた品揃え、店内のレイアウトに変えていこうという取り組みを、今急ピッチで進めているところです。
現場(店舗)を回っている店舗経営相談員には、そのための武器も与えられています。何かと言うと、地理情報システムや各種統計データなど、お店のきめ細やかな立地特性や商圏特性を確認することができるデータベースが全員のPCに入っていて、営業担当はこれを基にお店の方と相談しながら、日々店舗改善に取り組んでいます。