最新アルバムをストリーミング配信しなかった米国のアーティスト
★紹介した商品・ブランド
Kanye West『Donda2』
――最近の買い物体験の中で「良い!」と思ったもの、印象に残っているものについて、具体名とともに教えてください。
現代ではApple Musicなどのストリーミング配信が存在しない時代と違って、良くも悪くも手軽に好きな音楽を聴くことができます。しかし米国のラッパーKanye Westは最新アルバム『Donda2』をストリーミング配信せず、自身がロンドンのスタートアップと開発・販売した音楽再生機器「STEMPLAYER」のみでリリースしました。そう! ファンはそれを買わないと、最新アルバムが聴けないのです。
さらにアルバム発売日に合わせてNetflixで自身のドキュメンタリー映画を配信しアルバムのPRもばっちり。彼のファンのほとんどはまんまと映画を観てSTEMPLAYERを買ったでしょう! ストリーミング配信が当たり前になりつつある現代に、あえて配信を行わずほとんど普及していないSTEMPLAYERのみで販売するのはさすが強気だな、とも思いましたし、「新しい!」「おもしろい!」と思い購入しました。2000年代、一枚3,000円以上ものお金を払ってCDを購入して聴いていた、あの時の、アルバム一枚に対する情熱や、ワクワクする気持ちを思い出しました(笑)。
ちなみにSTEMPLAYERはただの音楽再生機器ではなく、ボーカル、ドラム、ベース、その他サンプルの音量など、それぞれのトラックを単体でコントロールすることが可能です。そのため、たとえば自分の好きな曲をボーカルだけ残してアカペラにする、逆にインストを聴くということもできます。
――顧客の行動・心理が日々変わっていく中、良い顧客体験を届けるためにどんなことに気を付けて仕事をしているか、教えてください。
人から聞いた話や「●●だろう」などの決めつけではなく、自身の購買体験・実体験からひらめきを得ることが大切だと思っています。日頃のリアルな自身の購買体験には「顧客の行動・心理」のヒントが隠されていると思います。また、コロナ禍のデジタル化により、売る側も買う側も猛スピードで日々進化しています。そういった進化や変化にいち早く気づくためのリアルなリサーチ・情報収集はとても大切だと思っており、日々現場に足を運んで自分自身が体験することを意識しています。

株式会社バニッシュ・スタンダード Staff Producer TSUKASA.氏
定期誌『MarkeZine』76号 特集:リテール最新動向
第1回:「顧客体験価値の向上」を共通ゴールにしよう。『小売DX大全』著者からの提言
第2回:鍵は「UXへの落とし込み」リテールビジネスの今後を消費者調査から紐解く
第3回:半歩先の進化が、より良い顧客体験に ユナイテッドアローズのEC・アプリのリニューアルから学ぶべきこと
第4回:「セブン-イレブンアプリ」で高まる店舗体験とその先にあるラストワンマイル構想
第5回:業界キーパーソンに聞くイチオシの買い物体験(本記事)
第6回:買い物体験を豊かにする、最新リテールテック
第7回:リテールテックで店頭体験は進化する──量販店などで導入広がる「リモート接客」の可能性
