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マーケティングモデルの基本解説

【第2回】消費者研究から紐解くパーセプションのメカニズム――消費者の主観的価値をマネジメントする

パーセプションの多様化が独自性を高める~Appleとスターバックスの事例~

 ブランド価値が高いとされるApple(iPhone)とスターバックスを例に、それぞれのパーセプションをイメージしてみましょう。

 AppleのiPhoneは、カメラの性能やUIなどで他社より優れているイメージがあります(機能的価値)。加えて、洗練されたデザインは、持っているだけで気持ちを高めてくれますし(感情的価値)、Appleの先進的・革新的な演出もあり、iPhoneの新機種発売は世間からも注目を集めています(認識的価値)。そして、ファッショナブルで自分を表現するアイテムとしても使えます(社会的価値)。つまり、iPhoneはすべての価値の側面からパーセプションを構築し、独自性を築けているため、高い評価に繋がっていると考えられます。

 次にスターバックスは、家でも職場でもない「サードプレイス(第3の場所)」をコンセプトに、コーヒー市場を席捲。品質の高いコーヒーやおいしいドリンクの提供(機能的価値)だけでなく、上質な時間と空間を体験する場所を作り、「感情的価値」を最大化することで、独自のポジションを築きました。加えて、コンビニや喫茶店では提供できない新奇性のある期間限定メニューを用意するなど、飽きさせない工夫を継続しています(認識的価値)。そして、居心地のいい空間は結果として自己表現の場としても利用され、スターバックスに行くことが一種のステータスにもなっています(社会的価値)。

 このように、機能的価値を土台に消費者が認識する価値を多様化させ、関係性を構築することが、商品やサービスの独自性を高めるポイントであると言えます。

マーケティングの実務に適用する11のパーセプション

 消費者のパーセプションはマーケティングを考える上で非常に重要な視点です。しかし、パーセプションは消費者のヒューリスティックな感覚であるため、複雑で理解しにくい部分もあります。

 実際に、よく取り上げられるマーケティング手法やツールは、ファネルや行動プロセスにフォーカスしたものが多く、マーケティング活動を「WHO(誰に)」「WHAT(どんな価値を)」「HOW(どのように届けるか)」でたとえるならば、「HOW」の方法論に偏重していると感じます。

 ですが、そこから一段階上がり、消費者が認識する価値(WHAT)を体系的に理解できれば、WHO・WHAT・HOWの解像度を高められ、消費者との関係性を構築する際のヒントを見つけられるはずです。

 そこで、パーセプションとマーケティングの実務を結び付けるために、各種文献をもとに、4つの価値(機能・感情・認識・社会)の視点から、様々な商品やサービスに共通する具体的な11のパーセプションを導き出しました。次回は、この11のパーセプションの解説に加え、それを起点にした価値訴求の検証結果を紹介します。

【主な参考文献】

・Holbrook, M. B. (1999). Consumer value. A Framework for Analysis and Research; Routledge: London, UK.

・Holbrook, M. B. (2006). Consumption experience, customer value, and subjective personal introspection: An illustrative photographic essay. Journal of business research, 59 (6), 714-725.

・Holbrook, M. B., & Hirschman, E. C. (1982). The experiential aspects of consumption: Consumer fantasies, feelings, and fun. Journal of consumer research, 9 (2), 132-140.

・Sheth, J. N., Newman, B. I., & Gross, B. L. (1991). Consumption values and market choices: Theory and applications. Cinicinnati, OH: South-Western Pub.

・Sheth, J. N., Newman, B. I., & Gross, B. L. (1991). Why we buy what we buy: A theory of consumption values. Journal of business research, 22 (2), 159-170.

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この記事の著者

安野 将央(ヤスノ マサヒロ)

株式会社マクロミル データビジネスデザイン本部

シニアマネージャー/マーケティングサイエンティスト

 

大学卒業後、D2C企業にてデータベースマーケティングに従事。新規顧客の獲得からリピート顧客育成まで、LTV(顧客生涯価値)をベースとした顧客分析でPDCAマネジメント...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/05/16 07:00 https://markezine.jp/article/detail/38883

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