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“在庫廃棄”への対応は、企業の試金石となる。年2,700億円の“余剰在庫”解消を目指すリアコネの挑戦

「廃棄禁止」は成長を奪う? 廃棄問題の解消を企業の成長に繋げるには

 過剰な在庫をブラックボックス的に廃棄することが、環境へ負荷を与えたり、在庫廃棄のコストが増大するなどのデメリットに繋がることもあり、そのことが企業価値にマイナスに働く可能性は大いにある。しかし、服部氏は、サステナビリティへの意識が過剰になることでプロダクトの進化や企業の成長が止まってしまっては意味がないと話す。齊藤氏も、この意見には大きく頷いた。

 「フランスでは今年から『衣服廃棄禁止令』が施行され、売れ残りの新品の衣類を企業が廃棄することが禁止されました。方向としてはいいと思うのですが、私も『脱成長』という考えには反対で、成長は、し続けなきゃいけないと思っています。その中で何ができるのか、共存できるのかが重要だと思っているので、服部さんの考え方にすごく共感します」(齊藤氏)

 「私も競争はあるべきだと思います。お客様の課題を見つけて製品を進化させることは、競合がいてこそできることですし、その競争に勝つために生産量を増やすというのは当然の流れだと思っています。しかし、大量廃棄が発生していることは間違いない事実です。生産と販売の両面から在庫対策が行われるべきで、それをうまく調整していくためにも、作った商品を極力最後まで販売する手段を作りました。

 将来的には、『リアコネ』では『どんな商品が、誰に、何の商品と一緒に売れたのか』という結果をメーカー様にフィードバックすることで、需給予測の面でも貢献したいと考えています」(服部氏)

 SDGsのゴール達成目標の2030年が近づくに連れてサステナビリティ実現を後押しするサービスはますます増えそうだが、事業における採算性を叶えなければサステナブルな事業とはいえない。

 「たとえば、滞留在庫を経済的に困窮した家庭に無償提供するようなサービスは、在庫の有効活用という意味では良いのですが、メーカーからすると『燃やす費用』は減るものの、キャッシュリターンが基本的にはありません。メーカーが苦しいと事業上サステナブルではないため、きちんと経済循環するような仕組みが必要だと考えます。

 イギリスにある低所得者しか入れないコンビニのようなお店で、お客は70%OFFほどで商品が買えます。そのコンビニを運営する会社の担当者は『あげる(無償提供)』より、『社会に復帰させるような仕組みを支援する』ほうがいいというのです。お金を出さないと買えない環境を作ってあげるのが、自立を目指すうえで心理的にも良いのだと。

 私はそれにとても共感していて、無償提供よりも『売る』ことを目指して循環させていきたいと考えています。今後は、共感してくれるメーカーさんを探しながら一緒に取り組んでいきたいと思っています」(服部氏)

数パーセントの廃棄に企業としてどう向き合うか

 未使用商品の廃棄の経済規模は2,700億円相当と莫大だが、全体の販売量からすると1~5%程度だという。

 95%程度は各メーカー様がこれまで通り、競争して生活者に商品を通じた価値提供をし、どうしても余ってしまう滞留在庫・返品商品の数パーセント部分について、なんとか捨てないで有効活用することを目指せばいい。

 「数パーセントでも、世界中の事業者全体では膨大な数字になります。この数パーセントをただのゴミにしてしまうか、それとも有効活用するのかが、今後、あらゆる意味でのサステナビリティ向上に企業としてどれだけ真摯に取り組んでいるかをジャッジされる、試金石の一つになると思います。

 究極的には、メーカーが廃棄ゼロを実現するのが望ましいけれど、リアコネはそこに至るために、まずできることから挑戦されている。まずできることから手をつけているのは、より現実に即した、先が見えない不確実な今の時代に合った方法ですね。リアコネがどんどん結果を積み重ねていくことで、その先には大きく道が広がっていくと思います。」(齊藤氏)

 廃棄されたモノで環境を傷つけないという意識は広く消費者に浸透した印象があるが、今後は廃棄量や在庫の有効分配が最適化されているかが、SDGs的な視点でのジャッジポイントになる。その選択肢をいかに持っているかも、企業価値を左右するポイントになりそうだ。

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この記事の著者

笹山 真琴(ササヤマ マコト)

Makoto Planning,Inc. 代表取締役

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/05 09:00 https://markezine.jp/article/detail/38977

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