年間2,700億円相当の商品が“余剰在庫”として処分されている
「リアコネ」というサービスをご存知だろうか。「リアコネ」は、商品ロスの在庫削減を目的に作られたサービスで、消費者が「リアコネ」サイト上で紹介されているメーカーの“余剰在庫品”を購入すると、ポイントがもらえるというサービスだ。消費者はいつも行くお店で対象の商品を購入し、レシートをスマホで撮ってLINE送信することでポイントの還元を受けられる。メーカーの廃棄ロスを削減しつつも、消費者も恩恵が受けられる、相互にメリットのある仕組みとなっている。
運営企業の代表で、サービス発案者である服部昂氏は、大手日用品メーカーの研究員出身だ。服部氏は大学院卒業後、新卒で大手日用品メーカーに入社し、研究開発職として台所洗剤や風呂用洗剤の開発に携わった。大量製造により一個製造当たりのコストを下げることは長らく消費財製造の常識ではあったが、その弊害として、販売されぬまま廃棄せざるを得ない商品が大量に出てしまう事態も起こる。
「洗剤などの日用品の売れ残りは、新製品の入れ替えにともなって廃棄されます。店舗からメーカーへ返品されるものもあれば、段ボール箱に入ったまま小売店に仕入れられることもなく、そのまま焼却されてしまうものもあります」(服部氏)
その深刻な事実に直面した服部氏は、その後、新規事業部署へ異動。余剰在庫の合理的な活用を促すビジネスモデルを構想し、起業を決意。事業を本格起動させるべく、社内の「出向企業」制度を利用して株式会社リアコネを立ち上げた。
「通常、商品は段ボールに入れられ、各ドラッグストアに運搬されますが、その段ボール箱が開封されることもなくそのまま焼却されているのを実際に見たとき、非常にショックを受けました。その廃棄商品の一部でも消費者の方々に使ってもらえるような形を、リアコネの事業を通じて実現させたいと思いました」(服部氏)
服部氏によると、トイレタリー製品や化粧品、加工食品、ペットボトル飲料なども合わせて、消費財メーカーの廃棄在庫は年間でおよそ2,700億円ほど。それだけの商品価値が償却されているということだ。当然、廃棄場所への輸送コストや手間もかかってくるため、メーカーにとっても痛手と言える。
“在庫廃棄問題”の解消は、経営課題
サステナビリティが叫ばれる近年もなお、日用品などの製造業における余剰在庫の廃棄問題はブラックボックス化されたままであるケースが多い。
パーパス・ブランディングの第一人者で、電通出身、現・エスエムオーのCEOである齊藤三希子氏は、製造業において長きにわたって“ブラックボックス”化されてきた在庫廃棄問題への対策が、これからの製造業はもちろん、あらゆる業界に必要なパーパスドリブン経営と切っても切り離せないと断言する。
「サステナビリティ実現への強い意欲があるかは、昨今の企業価値判断において最重要項目のひとつです。そして企業がパーパス設定をする際、サステナビリティ実現に則ったテーマを核にする企業も少なくありません。余剰在庫の焼却処分による環境への影響の低減やコストへの意識が、製造業のパーパス体現の上で重要になるケースが増えてくるのではないかと思います」(齊藤氏)