わらしべ長者方式でビジネスを拡大
高橋:「空野めぐみ」の後、ソーラーパネルの施工もされていましたよね? 適切なピボットがいずれ成功につながっていくと思うのですが、メーカーから施工に移り、そこからソーラーパネルの施工事業を経て電力の小売り事業に至った流れの裏に、どういう決断があって、どのように今の主軸となるビジネスモデルに出会ったのか気になります。

大石:施工はたまたまです(笑)。株主の方を介して「空野めぐみ」をおもしろがってくれたある企業の社長にお会いする機会がありまして、エネルギーの分散化について語っていたら「おもしろいからうちの工場の屋根にソーラーパネルを付けてくれ」って。
施工なんてやったこともなかったからそのときは大変でしたけど、結果的にそれをきっかけに施工免許も取って、私自身も屋根に上ってパネルの取り付けをやるくらいにまでになりました。
要は、自分がいいと思って出したものがどう評価されるかは相手次第ということ。自分では目がチャームポイントだと思っているけど、ほかの人から見たら口のほうがチャーミングみたいなことってよくあるじゃないですか。そんな感じで、施工の件は、手のひら発電を作れるんだから屋根への取り付けもできるだろうという広い意味での共通点から、私自身の可能性に気づかせてもらえる大きなきっかけになったんです。
その後、施工で利益が出せるようになった頃に電力自由化の話が持ち上がって、送電線を通じて電気を売れる時代が来ました。そのときちょうど、南相馬市で世田谷区と連携したイベントをやっていて、世田谷区民の方が、南相馬市の電気を買えたらいいなと言ったんです。
そのニーズに応えようと思ったとき、創業時に考えていたアイドルから電気を買う構図と同じだと気づきました。それで、電力自由化とともにやっていく中で、顔の見える電力ができあがったという感じです。
高橋:時代の波や仕事での出会いから生まれたご縁を大切にしたことでチャンスが生まれ、それがピボットになって最終的なビジネスモデルに至ったというわけですね。
大石:この一連の流れを、私はわらしべ長者と言っています(笑)。
マーケあり!ポイント
・顧客や市場からのフィードバックを受け続けることで、株式会社UPDATERは適切なピボットを繰り返しています。最初は手のひらサイズの発電機、その後はソーラーパネルの施工、そして現在のブロックチェーンを用いた「顔の見える電力」のように、市場にサービスを出してはそこで受けた顧客の声、わかった事実をもとに柔軟なピボットを行っています。
・勝負をする領域を決めたら、タイミングが来るまで耐えることも重要なのではないでしょうか。大石さんは、幾度のピボットとそこからつながったご縁、結果としてのビジネスの成功を「わらしべ長者」と表現しています。途中であきらめずに試行錯誤を続けたからこそ、結果が出たわけで、自らが信じた事業領域を「うまくいかなくても信じ続ける」というのが、最終的な成功のカギになることはままあると言えます。