顧客が自らデータを提供したくなるための土台作りとは
顧客に価値を提供し、進んでデータを提供したくなるサービスを構築するにあたり、エン・ジャパンはまずは土台作りに着手した。土台作りのプロセスは、大きくは以下の3つに分けられる。
1.データの棚卸
2.データの取得
3.データの活用
1.データの棚卸
データの棚卸は、顧客の個人情報や自社Webサイトの訪問者データ、CRM並びにSFAのデータ、アンケート調査結果など、「自社が保有している情報は何か」「どこに格納されているか」を確認し、言語化する作業だ。
2.データの取得
データの棚卸が完了したら、次はデータを取得する体制を構築する。データは、Webサイトに設置されたタグやフォーム、配信した広告、SNS、メールなどあらゆるチャネルで収集されるものだ。田中氏は、各チャネルで分断され、顧客体験を毀損する状況に陥っていないか確認するべきだという。
「多くの企業では、広告運用はAさん、タグ運用はBさんなど分業が進んでいると思いますが、自分の担当領域外の仕組みも理解しておくことをお勧めします。タグの概念を理解しておかないと必要なデータが取れなくなりますし、顧客はあらゆるチャネルをまたいで自社サービスを体験します。一連の流れを理解しておかないと部分最適に陥って、ユーザー体験を毀損してしまう場合もあります」(田中氏)
また田中氏は、ユーザー体験を理解するために「自分自身で自社サービスを利用してみること」を勧めた。実際に会員登録やウェビナー申込などをしてみると、自然と顧客側の視点を持つことができ、体験の中に潜む違和感に気づけるためだ。
3.データの活用
データの取得体制が整備できたら、データの活用が進む仕組みを構築する。エン・ジャパンではCRM、CDP/DMP、KARTE Signalsなどの導入整備を進め、データ活用の基盤を作り上げた。
顧客ファーストの広告配信・コンテンツ企画の仕組み
3つのプロセスを経て、顧客がデータ提供をしたくなる土台を構築したエン・ジャパンは、顧客体験向上を目指して様々な施策を実行したという。田中氏はその中から、同社運営の若手ハイキャリア向け転職サイト「AMBI」の事例を紹介。一定の成果を得られた7つの施策について語った。
1.広告プラットフォームとのスムーズなデータ連携
2.ユーザーインサイトの分解と言語化
3.顧客データを取得するためのコンテンツ企画
4.顧客データを取得するためのランディングページ最適化
5.顧客理解を深めるためのインハウスマーケティング
6.サイト内外で一貫した顧客体験を実現する「KARTE Signals」
7.顧客に支持されるプライバシーガバナンス体制の構築
1つ目の「広告プラットフォームとのスムーズなデータ連携」では、FacebookコンバージョンAPI、Google拡張コンバージョンAPIを自社サービスとサーバー上で連携させたという。各社が公式でリリースしているAPIと連携することで、プライバシーに最大限配慮した広告配信を実施できる。
2つ目の「ユーザーインサイトの分解と言語化」とは、転職者の不安とAMBIの強みを言語化する作業だ。転職希望者はどのような不安を持っているのか。心理的・社会的・経済的・時間的など様々な視点から分析し、自身の個人情報を提供するのにふさわしい転職サイトかどうかをどう判断しているか把握した。
3つ目は「顧客データを取得するためのコンテンツ企画」。AMBIでは、顧客分析を通じて「自身の適性や強みを明確に知りたい」というインサイトを発見。職務適性の診断サービス「ジブン分析」をリリースすることで、そのインサイトに対応した。
