SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第100号(2024年4月号)
特集「24社に聞く、経営構想におけるマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

MarkeZine Day 2022 Spring

エン・ジャパン事例で考える、これからのデータ規制との向き合い方


 ヨーロッパのGDPR、日本の改正個人情報保護法、各プラットフォーマーによる規制など、データ活用のルールが大きく変わりつつある。法整備やプラットフォーマー規制の影響で、Cookieをはじめとしたデータを活用したWebプロモーションに踏み出しにくくなった現状に、マーケターはどう向き合うべきか。2022年3月開催のMarkeZine Day 2022 Springに登壇したエン・ジャパンの執行役員 デジタルマーケティング部長の田中奏真氏は、同社のファーストパーティデータを活用した取り組みを紹介。そして、直近のデータ周りのルール変更にどう向き合っているのか、明らかにした。

マーケターは、Cookie規制をポジティブに捉えよう

 2018年にEUで施行されたGDPR(EU一般データ保護規則)では、個人データの取り扱いを厳密に定めている。個人データの中にはCookie(Webサイト側が、訪問ユーザーのIDや閲覧履歴などを一時保存する仕組み)も含まれており、本人の同意なしにCookieを収集することは違法となる。アメリカやアジア圏でも、同様の規制が広がっている。

 2022年4月に日本で施行された改正個人情報保護法ではCookieは個人情報とみなしていない(日本では個人関連情報の扱い)。そのため、Cookieを第三者提供(例:プラットフォーマーのターゲティング広告での利用など)しないのであれば、Cookieの取得に本人の同意は必要ない。しかし、世界各国で個人情報保護の動きが強化され、いずれ日本も同様の規制が入る可能性は高い。

 また、GoogleやAppleなどブラウザやアプリを提供するプラットフォーマーも、Cookie規制に乗り出している。Appleは既にSafari上でサイトトラッキング防止機能を実装しており、Googleも2023年までにChrome上でのサードパーティCookieが取得できなくなる仕様にする予定だ。

 どれも、これまでデジタルマーケティングに携わってきた担当者にとってネガティブな話題に聞こえるかもしれないが、田中氏は「ポジティブに受け取るべきだ」と断言。ユーザーにとっては幸せな状態に近づいているからだ。そして、田中氏は次のような考えで動くべきだと語った。

「ネガティブに捉えている方は、ファーストパーティデータの活用法がわからなかったり、『マーケティングコストが増えてしまうのでは?』と懸念していたりするのだと思います。マーケティングのコスト増加は確実に訪れますが、その上げ幅をどう抑えるかを考えましょう」(田中氏)

エン・ジャパン株式会社 執行役員 デジタルプロダクト開発本部 デジタルマーケティング部長 田中 奏真氏
エン・ジャパン株式会社
執行役員 デジタルプロダクト開発本部 デジタルマーケティング部長
田中 奏真氏

これからのデータ活用に必要なのはパーミッション

 田中氏が所属するエン・ジャパンでは、「AMBI」「エン転職」「ミドルの転職」「エンゲージ」など、転職・求人にまつわるWebサイトを複数運営している。いずれも求職者と求人企業のマッチングを目的としており、求職者に対して適した求人情報を提供する上でCookieも利用していた。

 Cookie規制が強まる中で、個人情報を含めたデータをどのようにマーケティングに活用していけばいいのか。模索した結果、田中氏は「原点回帰するべき」という結論に至った。

データを活用したマーケティングで目指すべきは、顧客と商品の良質なマッチングです。最終的には、顧客にどれだけ価値を感じていただけるかどうかが大事なのです」(田中氏)

 ここで田中氏は、マーケティングの第一人者セス・ゴーディンが書籍『パーミッション・マーケティング』(海と月社)で提唱したパーミッション・マーケティングに言及した。パーミッション・マーケティングとは、事前にパーミッション(許諾・同意)を得た相手だけを対象にしたマーケティング活動を指す。

 事前に顧客から許諾を取ることで、反応率の向上が期待できる。押し付けがましさが軽減されるため顧客からの好感度も下がりにくく、最終的にエンゲージメント向上につながりやすい。

「パーミッションこそが顧客とのつながりを強めるというゴーディン氏の主張は、1999年に発表されています。個人情報保護規制の強化をきっかけに、顧客からの同意が重要だとここ数年で叫ばれていますが、実は20年以上前にその重要性が提唱されていたんです」(田中氏)

 パーミッション・マーケティングというと、メール配信をする際に事前に許可を取る「オプトインメール」を連想するかもしれないが、本来はメールだけにとどまらない。「あらゆるマーケティング活動」に適用されるものだ。個人情報取得に関しても例外ではない。では、個人情報取得を事前に許諾してもらうにはどうすればいいのか。

「やるべきことはシンプルで、マーケティングの原点である顧客の不満を把握して、問題を解決する。これだけです。問題を解決し、価値を感じてもらって、顧客が自らデータを提供したくなる仕組みを作るんです。主語は顧客なんだと意識付けしましょう」(田中氏)

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
顧客が自らデータを提供したくなるための土台作りとは

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
MarkeZine Day 2022 Spring連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/06/17 18:39 https://markezine.jp/article/detail/39115

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング