セルフヘルスケアを2つの視点で分析
今回は「セルフヘルスケア」、つまりヘルスケア目的で「自分で」対処する行動に注目します。分析には、「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」(注)のデータを用い、コロナ前の2019年から現在までの動きを振り返ってみたいと思います。分析の視点は以下の2点です。
分析1:コロナ禍直前である2019年から直近の2023年までの5年間、セルフヘルスケア市場においてどのような変化が起きていたのかを把握する。特に消費行動とその背景にある生活者の関心の変化について関係性を探る。
分析2:上記の5年間で特に変化が大きいセルフヘルスケアベネフィットについて分析する。デモグラフィック分析を行うことで、その背景にある消費者の実態を考察し、今後のヘルスケア戦略を立案するためのヒントを探る。
注:「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」
生活者13万人以上に対する大規模サンプリング調査の調査・分析結果をサマリーレポートとしてまとめたものです。2012年度よりレポート発刊を始め、漸次発展しつつ今年度で12年目となります。
今回取り上げた、「セルフヘルスケア市場」に加え、「ヘルスケアフーズ市場(健康食品、加工食品、生鮮食品、医薬品等)」「健康食品・サプリメント市場」についても詳細に把握したデータベースとなっております。
「風邪などの感染症予防・免疫力改善」「不眠・ストレス対策」市場が大きく伸長
まずは、分析1のコロナ禍におけるセルフヘルスケア市場の変化を見てみましょう。「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」では、日本全国の15~79歳の男女約12,000人を対象に調査を行い、ヘルスケア消費の実態を毎年定点的に捉えています。(毎年8月頃に調査を実施)
直近1年間にセルフヘルスケアとして行った消費行動について、その目的(ヘルスケアベネフィット)、利用金額や購入カテゴリを把握し、市場規模推計値を算出しております。
※ここでのセルフヘルスケアとは健康目的で食べたり飲んだりする健康食品・サプリメント、加工食品、生鮮食品、市販の医薬品等を総称するヘルスケアフーズ市場に加え、化粧品、ヘアケア、オーラルケア、健康・美容グッズ、スポーツ運動グッズ・サービス、施術・美容サービス、睡眠グッズ、入浴サービス・グッズを総称する市場のことを指します。
2019年から2023年までのセルフヘルスケア市場規模の推計値を見ると、コロナ前の2019年から2020年にかけては、外出行動の抑制の影響もあってか市場全体が縮小し、2023年に至っても2019年の水準には戻っていません。コロナ禍が始まってすぐの段階では 外出の自粛のため消費行動が限定され、市場が縮小したと考えられます。その後も経済停滞や社会不安などから、市場が十分に戻ってきてはいないと考えられます。
ではこの市場トレンドを深堀してみましょう。調査ではセルフヘルスケアのベネフィットを20個に分解し、それぞれの目的でいくら金額を支払ったかを調査しています。そこから各ベネフィットの市場規模を算出することができます。
コロナ禍で最も大きく変化した市場は「風邪などの感染症予防・免疫力改善」の市場です。2019年の市場規模が6,289億円だったのに対し、2023年では9,448億円と伸長率はおよそ50%となっています。また「不眠・ストレス対策」についても 2019年が4,263億円だったのに対し 2023年は4,817億円と13%伸びています。一方で「血液サラサラ」「口臭対策」「高血圧予防・改善」などのヘルスベネフィットは市場規模が大きく減っています。ヘルスケア全体にかける金額が変わらない中で、感染症予防などにシフトすることで市場が縮小していったと考えられます。