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なぜ顧客は離れてしまうのか?10の離脱要因から考える、関係を維持・強化するポイント【お薦めの書籍】

 新規顧客を獲得するハードルが上がり続ける中、既存顧客の離脱を防ぎ、長く自社のプロダクトやサービスを利用してもらうことの重要性は高まっています。しかし、顧客をつなぎ留め、つながりを強化するにはどうすればよいのでしょうか。本記事では、顧客が離脱する理由を紐解き、選ばれ続ける企業・ブランドになるための戦略を解説する書籍を紹介します。

既存顧客の維持がマーケティングにおける重要課題に

 今回紹介する書籍は『こうして顧客は去っていく サイレントカスタマーをつなぎとめるリテンションマーケティング』(日本実業出版社)。著者の宮下雄治氏は、國學院大學経済学部の教授を務めるとともに、国内の流通・サービス企業を中心としたマーケティング支援に携わられています。

『こうして顧客は去っていく サイレントカスタマーをつなぎとめるリテンションマーケティング』 宮下雄治(著)日本実業出版社 1,870円(税込)
『こうして顧客は去っていく サイレントカスタマーをつなぎとめるリテンションマーケティング』宮下雄治(著)日本実業出版社 1,870円(税込)

 昨今、物価の高騰や市場の成熟あるいは衰退、消費者の意識・行動の変化などの影響を受け、新規顧客を獲得するコストや難易度が高まっています。顧客や売り上げの減少を新規獲得でカバーすることが難しくなる中、既存顧客の維持が一層マーケティングにおける重要課題となっています。

 著者はこの状況を「『穴の開いたバケツ』に水を注ぎ続けても、水はたまらない」と表現し、バケツの穴を小さくするためには「顧客が去っていく本当の理由を知ること」が必要であると指摘しました。では、顧客が離れる理由を突き止め、離脱を防ぐにはどうすればよいのでしょうか?

顧客が離脱する10の要因とは?その一部を紹介

 本書では、顧客の流出を防ぎ維持するマーケティングを「リテンションマーケティング」と表現し、獲得ではなく定着に重きを置く戦略を提案。このリテンションマーケティングを実現するため、顧客が離脱を選択する要因を10種類に分類し解説するとともに、対応のヒントを提示しました。

 要因の1つ目に挙げられたのは、「価格と価値が見合っていない」ことです。顧客が事前に期待した水準や払ったコストに対して、得られた便益や価値が見合わず「期待外れ」と感じた際に離脱が発生するわけです。

 顧客はプロダクトやサービスを購入・消費した後、期待に対する評価を行い、望ましい価値を得られたか「目標達成度」を測ります。結果、期待以上・期待通りだった場合はもちろん、多少期待を下回る場合であっても自らの意思決定に納得しようとする心理効果「同化作用」が働くため、マイナスにはなりにくいといいます。

 一方で期待を下回った場合、特に「規範(こうあるべきだろう)」「許容(少なくともこれくらいは)」という期待を裏切る評価だった場合に、顧客は失望感や怒りを感じます。これらの感情は離脱に直結するため、そうならないサービス設計、あるいはクレームがあった場合も顧客に寄り添った対応をするといった取り組みが大切です。

便利・ありきたりの体験では差別化ができない

 また、「『ありきたりの良い経験』では物足りない」ことも要因の一つに挙げられています。便利であることが当たり前の現代において、「便利+ありきたりの体験」では差別化要因にならないと著者は指摘。プロダクト・サービスの比較検討も容易になり、顧客のブランドスイッチがより行われやすい環境では、「顧客満足を超えた顧客歓喜(カスタマーディライト)」が重要になるといいます。

 そのためには、「大きな感動」や「累積的な顧客満足」をいかに提供できるかがカギとなります。良質な体験を提供する上で、プロダクト・サービスやコンテンツに以下の要素を含むことが大切だと著者は示しました。

(1)新鮮であること
(2)驚きをともなうこと
(3)労力が軽減されること
(4)嗜好にマッチしていくこと
(5)洗練されていること

 逆に目新しさも驚きもなく、手間やストレスがかかり、顧客の好みでなく洗練されていなければ目の肥えた顧客を満足させられません。これらの要素を押さえ、満足する体験を提供している事例として、「じゃらん」「ゼクシィ」をはじめ様々な形で情報を届けるリクルートのビジネスを著者は紹介。同社は世の中にあふれる「情報」を洗練させ、ニーズあるところに届けることで、「当たり前に存在するもの」に競争力を生み出しているのです。

 本書では、この他の離脱要因や顧客との関係を維持する戦略における3つの鉄則などを、実例を交えて解説。自社のビジネスやマーケティングを見直し、顧客との関係を維持・強化するためのポイントが詰まった一冊となっています。顧客がなかなか定着せず悩むマーケターや、本質的な顧客理解に取り組みたい担当者は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

本記事は日本実業出版社からの献本に基づいて作成しております

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/03/28 08:30 https://markezine.jp/article/detail/45251

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