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特集:現場に再現性をもたらす マーケターが知っておきたい手法&フレームワーク

ヒットを生み出すリサーチ術とは? 正しい「ターゲット」「セールスポイント」を見つける3ステップを解説

本質的なインサイトを捉えた、コカ・コーラの「No Reason」キャンペーン

阿佐見:それをもとに「コカ・コーラはいつ飲むとおいしいと思う?」というヒアリングを行ったところ、多くの人が「うーん……いつって言われても……」とまず回答し、その後に選択肢を示すと「暑いとき」「ハンバーガーを食べたとき」を選ぶ様子が見えてきたといいます。データ上には回答しか残りませんが、生の声は「うーん……」であることにこそ、顧客のインサイト(言語化されていない本質的な欲求)が潜んでいると考えた小宮は、「特定のシチュエーションではなく、わけもなく、急に無性に飲みたくなる」のがコカ・コーラのインサイトであることを発見しました。

 それをもとに、いくつかの飲料について「無性に飲みたくなる時はありますか?」とリサーチをしてみると、コカ・コーラは「はい」と答える人が突出して多く、この点に関してコカ・コーラがユニークな存在であることも明らかになりました。そして生み出されたのがコカ・コーラの持つ飲みたくなる強い衝動を体感させる「No Reason(理由はない)」というキャンペーンだったのです(※)

 このように、「とりあえず調べよう」といった仮説なきリサーチは、誰もが思いつくようなアイデアに着地してしまいがちなのですが、仮説を立ててから調べるという順番を守ると、本質的なインサイトを得られやすくなり、新たなアイデアにつながります。

──仮説のないままリサーチをすると、生活者が言語化できていること以上のものはわからないということですね。

阿佐見:そうなんです。調べて出てくるデータは既に言語化されていることしかありません。でも、まだ言語化できていないけれどなんとなく思っていることを上手く突けると、「ああ、それそれ!」というインサイトを突くことができます。そこを探すためには、自分でまず仮説をいっぱい立てること。そうするとリサーチがすごくおもしろいものになると思います。

※『広告マーケティング力』(広告マーケティング力編集委員会編・誠文堂新光社)をもとに筆者まとめ作成

「ターゲット」「セールスポイント」を絞り込む3ステップ

──書籍では、「ターゲット」「セールスポイント」を絞り込むステップが3段階に分けて解説されています。この3ステップについてご教示いただけますか。

阿佐見:ステップ1では、今申し上げたように、なんとなくの感覚で構わないので「ターゲット」「セールスポイント」の仮説を出していきます。「なんとなく」と言うと雑な感じがするかもしれませんが、全然悪いことではありません。むしろその案件にどっぷり浸かる前段階で感じていることは、本質を突いていることもあるので、インプットする前に考えておくのが大事です。

 その後ステップ2で、仮説検証サイクルをぐるぐる回していきます。大まかに分けると、最新情報を参照する「デスクリサーチ」、その場に行ってみる「フィールドワーク」のような一人でやるリサーチと、インタビューやアンケートなど他者が必要なリサーチがあります。これを繰り返しながら仮説をブラッシュアップして、ターゲットとセールスポイントが確定したら、ステップ3として打ち手を実行していきます(図表1)

図表1 ヒットをつくる調べ方の3つのステップと目的別リサーチ(タップで画像拡大)
図表1 ヒットをつくる調べ方の3つのステップと目的別リサーチ(タップで画像拡大)

阿佐見:なかなか成果の出ないプランナーのプランニングを見ていると、ステップ1からステップ3にいきなり飛んでいるケースが多いです。ステップ2の仮説検証サイクルをきちんと回すことが非常に大事です。

──ステップ1では、「仮説テンプレート」を紹介されています。

阿佐見:「仮説テンプレート」は私がいつも行っていることをまとめたものです(図表2)

図表2 仮説テンプレート(タップで画像拡大)
図表2 仮説テンプレート(タップで画像拡大)

阿佐見:これは緻密に埋めようとすると時間がかかってしまうのですが、10分程度に時間を区切ってさっと埋めていくのが使い続けるコツです。

 まず情報収集などは行わず、自分の中にある情報だけを使って1回埋めてみる。左側が埋められて初めて、明らかにすべきことが見えてきます。明らかにしたいことが見えれば、それを調べるためにどんな手段(リサーチの選択肢)を取ればいいかもはっきりとしていきます

──ステップ2の仮説検証サイクルは、どのような点がポイントとなってくるのでしょうか?

阿佐見:仮説検証サイクルでは、目的別にリサーチを使い分けていくことが重要です。目的Aとして、「アイデアを売れる形に変えるヒット商品開発リサーチ」があります。これがおそらく一番楽しくて、頻度を増やしてほしいと思うリサーチです。

 具体的には、こういう商品なら売れるんじゃないか、こういう使い方はどうだろうか、といった形でアウトプットを出し、それを実際にターゲットに見せてみる方法です。特に新規事業のプランニングですとコンパクトに30分程度で何度もデプスインタビューを繰り返しながらサービスを設計していくので、この目的Aはすごく楽しいですしおすすめです。

 目的Bの「戦略リサーチ」は、いわゆる3C分析で、顧客・競合・自社の情報を集めていく分析。目的Cは市場に出した商品を売り続ける「ロングセラーリサーチ」、つまり効果検証のリサーチですね。市場に出した後に古くならないようにチューニングしたり、ブラッシュアップポイントを見つけていったりするためのリサーチです。

 この3つのリサーチの中に、それぞれデスクリサーチ、フィールドワーク、インタビュー、アンケートなどを組み合わせていきます。

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新人時代の自分に向け、10年分のノウハウを詰め込んだ

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/06/28 07:30 https://markezine.jp/article/detail/39239

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