「三つのC」の見直しが良い接客の手がかり
コミュニケーション(Communication)・コンバージョン(Conversion)・コスト(Cost)の課題。福島氏はこれらを「三つのC」と表現し、これらの見直しが良い接客への手がかりになると語る。
では「理想のWeb接客」とはどういうものか。福島氏は先に挙げた悪例の改善案を通じ、理想のWeb接客のヒントを提示する。瞬間接客は「興味接客」つまり顧客の欲しい瞬間に合わせた接客へ変えるよう提案。KY接客は「FY(For You)接客」へ転換し、一人ひとりに合わせた接客の重要性を説く。
バラマキ接客は「エコひいき接客」に変え、ロイヤルティの高い顧客を優遇し、不安を感じがちなサービスの未利用者には相応の案内を差し出すよう提案する。
「商品の魅力を伝えるだけではなく、ファンあるいはファンになり得る方が嬉しいと感じること・逆に邪魔になるものを考える姿勢が大切です。サービスや人によって、つまずいたり不満を感じたりするポイントは異なります。そこが離反原因になるので、回避するよう考える必要があるのです」(福島氏)
無駄打ち接客は「無駄ナシ接客」に転換し、次への学びを得られる有意義な接客を推奨。福島氏は「失敗を早く発見すれば、勝ちパターンにたどり着くまでの期間を短縮できる」と述べ、振り返りの時間を設けて施策の効果検証やリアルタイムでの顧客分析を地道に行う重要性を強調する。
Web接客の次なるフェーズをどう乗り越えるか
三つのCを見直し、Web接客にある程度取り組んだ企業は「新規獲得の成果が頭打ちになり、向き合う課題が『利用の定着化』『エンゲージメント向上』『体験価値向上』へと変わっていく」と福島氏。フェーズの移行にともなって生じ得る課題を解説する。
一つは、データ活用の課題だ。継続利用の促進を目指して既存顧客の状態を深く把握するにあたり、顧客データが社内に散在していたらどうなるか。福島氏は「離反理由あるいは継続要因を考えようにも知る術がない」と指摘する。
福島氏はコミュニケーション設計の課題も指摘。サイトやアプリなど顧客との接点が増える中でも「画一的なコミュニケーションが残ってしまっていないか」「顧客の体験が分断していないか」を再検討する必要があるという。
「顧客データ基盤を構築し、分析の体制が整ってくると、優良顧客や離反する顧客を理解した上で、接点に応じた適切なコミュニケーションを設計できます。たとえば『ユーザーからメールでこのようなコンタクトがあったので、サイトではこういったおもてなしをしたい』といった取り組みも可能です」(福島氏)