「YouTube」という言葉を聞かない日はなかった「ad:tech」
ニューヨークで行われた世界最大のデジタル・ネットマーケティングのカンファレンス「ad:tech」から帰ってきたところだ。去年の参加者が8,500人であったのに対して、今年は12,000人と40%も伸び、ネットマーケティングに対する興味の高さが感じられた。
そこでもっとも印象的だったのは、参加したほとんどのセッションで、「YouTube」という言葉が出てこないものはなかったということだ。Googleによる高値買収のせいでもあるが、去年は一部の人しか知らなかったビデオ共有サイトが、今年は誰もが知っている話題の中心になったというのは、この業界の進化の速さを感じさせる。「ad:tech」の会場では、330社以上の企業展示もあり、当然のことながらビデオ配信プラットフォームなども多数紹介されていた。
それらを見ているうちに、「次世代ビデオ共有サイト」の2つの方向性が見えてきたように感じた。それらは、「ビデオ共有サイト」というより、「ビデオクリップ共有サイト」や「ソーシャルビデオ編集サイト」、あるいは「ビデオ共有プラットフォーム」と呼んでもいいだろう。その代表的なサイトを紹介しよう。
ビデオクリップをリミックスする楽しみ 「Jumpcut」
9月にサンフランシスコのオフィスを訪れ、CEOのインタビューをした後、2週間後ぐらいには米ヤフー!による買収が決まってしまったのがこの「Jumpcut」である。
今までのビデオ共有サイトとの大きな違いは、個々のビデオクリップや音楽ファイルをアップロードして、それをサイト上で編集できることにあるだろう。Flashベースでつくられたこのサイトには、下図のような編集画面があり、クリップを入れ替えたり、音楽を挿入したりというビデオ編集がサイト上でできる。また、ビデオクリップをつなぐときのエフェクトなども充実している。
さらに面白いのが、ビデオの素材として、ほかのJumpcutユーザーのクリップを使えることだ。ユーザーは「パブリック」と「プライベート」のいずれかを選択することによって、ファイルの公開/非公開を設定することができる。公開されているビデオクリップを再生して気に入ったら、「Remix」というボタンを押すと、そのビデオを取り込んだ編集画面が表示され、すぐさま自分のクリップを加えるなどしてマッシュアップビデオをつくることができるのだ。