大企業ゆえの「データ関連業務」における課題
マスとデジタルを統合した広告データ基盤を構築し、これを軸にした業務変革を進めているNTTドコモだが、データ基盤の構築を始めたきっかけは何だったのか?
それは同社が抱える課題に起因する。1つ目の課題は「サービス数の多さ/人事異動」だ。サービス主管部の数は50を超え、広告費の規模も主要サービスでは数十万~数億円規模と幅広いため、広告のやり方もそれぞれに異なってくる。そんな環境もあってか業務の属人化も発生していたが、担当者が独自にPDCAを回せるようになっても、数年おきにある人事異動や代理店変更などによって、組織に知見が蓄積されない懸念があった。
この1つ目の課題から派生して、2つ目の課題「PDCAの代理店依存」も起きていた。社内でスキルの標準化ができていなかったこともあるが、PDCAを回すために必要な分析データを代理店からの週次レポートに頼っていたという。
これら2つの課題から発生するリスクと問題点を整理すると、以下のようになる。たとえば、施策の振り返りから次のアクションを起こすまでに時間がかかってしまう、レポーティングに時間と労力が割かれるために代理店側からの新しい提案が生まれにくいといった短期的な問題のほか、代理店の体制に変更があるとそれまでの知見や効率化がリセットされるという中長期的なリスクもある。
みんながデータを業務に活かせる状態を目指して
そこで野村氏らが目をつけたのが、ダッシュボードツールだった。目指したのは、バラバラに散在していたデータが一元化され、誰でも・いつでも・欲しい情報にアクセスできる場所=ダッシュボードだ。
「理想としたのは、スキルや役割に関係なく、フラットにみんなが改善策を検討できる状態です。そのために、ダッシュボードのUIを標準化し、それを使ったPDCAの回し方までフォーマット化することで、常に一定水準以上のレベルでリアルタイムに広告PDCAを回せるようにしようと考えました。必要なデータが出てくる度に代理店に共有をお願いしたり、社内のどこに欲しいデータがあるかわからず探したり。そんな時代を終わりにしたい、という思いがありました」と野村氏は当時のビジョンを語る。