現場のニーズを反映し、ダッシュボードを作成
では実際、どのようにツールを導入してデータ基盤を構築していったのか?
NTTドコモが導入したのは、セールスフォースの「Marketing Cloud Intelligence(以下、旧名称Datoramaで統一)」。もともと代理店からのレポートの授受効率化や貯蔵に使っていたツールだが、デジタル広告レポートだけでなく統合的なマーケティングダッシュボードツールとして見直しを図った。その際、デジタルだけでなくマス広告とその周辺データもすべて入れ込むことを重視したという。
どの組織でも共通して使うデータとして「デジタル広告予算/CV/CPA」「テレビ出稿GRPデータ」「販売数・契約数」を入れ、これとは別に案件ごとに必要なデータとして「アンケート認知データ」「自然検索データ」「SNSデータ」「サイト行動ログ」「店舗来客数」なども取り入れた。

「現場でメディアプランニングする社員から要望のあったデータは、なるべくすべて取り込むようにしました」と野村氏。これらのデータを統合的につなぎ合わせ、クロスメディアで広告効果の分析ができるようデータ基盤を構築していった。
ダッシュボードの活用拡大・浸透に向けた啓発活動
データ基盤が整い、いざダッシュボードができても使えなければ宝の持ち腐れ。しかし、この類の取り組みは、現場社員への拡大・浸透のフェーズでつまずくことも多い。そうならないための工夫が、Datoramaを活用したPDCA会議の実施である。
PDCA会議を企画する際、ポイントとなったことが2つあると野村氏は言う。まず1つは、「定例化」。必要な時のみ随時開催するやり方では形骸化してしまうと考え、当初は週1で会議を実施することに決めた。現在は素早くPDCAサイクルを回せるようになったことから、週末に向けてさらにチューニングを図るべく、週2回PDCA会議を実施している。
2つ目のポイントは、「決定権のあるマネージャーの参加」。現場の担当者だけで会議すると、そこで決定した内容を上長に相談して、承認が下りてから代理店に依頼……というターンが発生し、PDCAの高速化が望めない。そこで毎週の会議にはマネージャーにも参加してもらい、その場で打ち手を検討・決定してすぐにアクションできるような体制にした。
セッションでは、実際どのようにツールを使っているのかデモンストレーションを交えて説明された。画面上では、広告への投下コストやそれに対する実績、KPIの進捗状況をはじめとした様々なデータが見られるようになっているほか、プロモーションの概況をモニタリングできるよう、ボタン1つで各指標の相関関係を確認できるようにもなっていた。
また、議論の中心となることが多いデジタル広告においては、各数値の把握はもちろんのこと、PDCA会議で出てきた「現状・議論・対応策」もデータベースに残しており、これが代理店とのやり取りに非常に役立っているという。
「業務や会議にダッシュボードを導入してから、課題を明確にするのがとても簡単になりました。たとえばディスプレイ広告経由の売上が下がっていることに気づいたとき、これまでであれば代理店に個別に尋ねる必要がありました。ですが、今はディスプレイ広告のうちどのメニューが悪いのかまで、ダッシュボードで一目で確認できるようになっています。便利なのはもちろん、業務のPDCAを高速で回すのに役立っていることを非常に実感しています」(野村氏)
さらに、PDCA活動の標準化を狙いに「PDCAマニュアル(虎の巻)」の作成にも着手した。ダッシュボードの操作方法や見方をまとめただけでなく、初心者に向けてCPAやCPCといった広告用語の解説や、その数値を見るためにダッシュボードのどこを確認するのか、数値が下がっていたらどこを見てどういう改善策を代理店と話したらいいか、といった内容がまとめられている。
