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電通マーケ部門の新人が必ず教わる「ヒットを生み出すリサーチ術」(1)正しい「ターゲット」設定の仕方

 「実務」「実践」「再現性」の切り口から、マーケティングの次の一手を探る「MarkeZineプレミアムセミナー」。7月22日実施回には、電通の戦略プランナー阿佐見綾香氏が登壇。「電通マーケ部門の新人が必ず教わる『ヒットを生み出すリサーチ術』」と題して、講演を行った。著書『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書』(PHP研究所)をベースに、電通のマーケティング部門で時間をかけて習得するマーケティングリサーチのいろはを解説。その内容を前後編にわたってレポートする。

※本記事は、2022年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』81号に掲載したものです。

なぜ「リサーチ」が必要なのか?

 阿佐見氏は電通の戦略プランナーとして食品や化粧品、電機メーカーといったクライアントのマーケティング戦略作りに携わっている。電通の戦略部門の中で、時間をかけて叩き込まれるのが「マーケティングリサーチ」である。とはいえ、阿佐見氏も新人時代は情報の山に埋もれて何をどう調べたらいいかわからず、的確に情報を調べられるようになるまでに5年以上の年月がかかってしまったという。

 そんなリサーチに苦戦した経験をもとに書かれたのが、昨年上梓した著書『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』だ。セミナーでは、書籍の第5章「顧客分析」に焦点を当ててリサーチに必要な考え方を紹介した。ヒットを生み出すために最も重要なのはターゲット分析だからである

『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)
『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)

 阿佐見氏はセミナーのゴールを「商品を売るまでのプロセスの中にリサーチ(ヒットをつくる調べ方)を取り入れて、適切な『ターゲット』を早期に絞り込み、ターゲットを動かすインサイトを発掘する方法を知ること」と置いて、話を始めた。

 まず、そもそもなぜマーケティングにおいてリサーチが必要なのだろうか。阿佐見氏は「『モノが売れない時代』と言われる現在。商品の情報量が増え、選択肢が多様化している中、広告を大量に投下するだけでみんなに同じ商品を買ってもらえる時代は終わりました」と指摘。そんな時代にどうすれば売れる商品を作れるのか。秘訣は、正しい「ターゲット」と「セールスポイント」の二つを見つけることだという。

 ターゲットはもちろん商品を買ってくれるお客様のこと。セールスポイントの解釈は様々だが、ここでは「ターゲットの買いたい欲求に刺さる商品のポイント」と定義する。

 同じ商品でも「ターゲット」と「セールスポイント」を正しく設定するだけで、売上が何倍にも跳ね上がることは珍しくない。阿佐見氏は成功事例として「ワークマン」を紹介した。

 ワークマンはまず、ターゲットを仕事で作業服を買う職人客から一般客に拡大した。さらに、作業服を売るために磨いてきた服の機能性や、作業服の圧倒的安さといったセールスポイントを突き詰めて、売上を2倍に伸ばすことに成功したわけだ。

 つまり、売れる商品は適切なターゲットとセールスポイントを設定している。そしてマーケティングの中でのリサーチの役割は「新しいターゲットとセールスポイントを早期に見定めること」だと阿佐見氏は言う。

 そして、リサーチを使うメリットとして以下の4点を示した。

リサーチを使うメリット
  • ヤマカンに頼らず、意思決定の精度が上がる。
  • 良いファクトを掴めると、売り方が見えてきて、無駄なお金を使わなくてよくなる。
  • ファクトをベースに、多様な角度から知恵を出し合って最適解を導き出せる生産的な会議ができるようになり、無駄な時間を使わなくなる。
  • 新しい時代への適応を妨げ、イノベーションを妨げる自分の中の思い込みを発見しやすくなり、先進的な提案ができるようになる。

良いリサーチで良いファクトを掴み、適切なターゲットとセールスポイントを早期に絞り込めれば、無駄な時間やお金、労力といったコストをかけずにビジネスを成功に導けるという大きなメリットがあると思います」(阿佐見氏)

リサーチの基礎「顧客分析リサーチ」

 リサーチの意義を説明したところで、リサーチの基礎である「顧客分析リサーチ」の解説に入った。

 まず新しい商品を担当する際、基礎情報を集めるために活用するのは古典的なマーケティングのフレームワークである「3C」だという。市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3点を軸に市場環境を分析する方法だ。「一番大事なのは市場・顧客なので、今回はこの点に絞ってお話をします」と阿佐見氏は改めて強調した。

 的確なターゲットを設定し、深く理解するには、顧客分析の正しいプロセスをたどることが必要だ。ターゲット分析のプロセス全体は図表1のようになっている。

図表1 ターゲット分析のプロセス
図表1 ターゲット分析のプロセス(タップで画像拡大)

 阿佐見氏は各プロセスでやるべきことや役立つフレームワークについて、詳しく説明した。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/05 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40095

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