Apple、Amazonに比肩する事業推進力をどう培うか
石戸氏はキーエンス、Salesforce、Apple、Amazonなどに比肩する事業推進力をパイオニアがサービス事業においても得られるように、現場の従業員に対し顧客データをデータベースに蓄積する必要性について説いていったという。
パイオニアのモビリティサービス事業の顧客は「社有車のある全業種」だ。様々な顧客の「車両保有台数」「契約している保険会社」「車の更新時期」などの情報を蓄積することで、それらのデータベースをプロダクト開発やマーケティング施策へ活用できる体制を目指した。
また、コロナ禍で多くの企業が急遽オンラインでのセールス力を試されたこともあり、突然の環境変化にも対応できるよう新たなMA、SAツールを積極的に導入し、スケーラビリティのある組織にすることも目指した。
目指すべき組織象を示した上で、石戸氏は組織の構成員、つまり担当者に求める4つの「条件」も洗い出した。
1.経営幹部が0から立ち上げることにコミットする
2.立ち上げ初期は経営幹部も現場を把握し実務を共に推進すること
3.再現性を持つこと
4.圧倒的な当事者意識を各自が持つこと
今期の短期成果を出しながら、中期のあるべき姿を実現するためには、これら4つの条件を満たす必要があり、自身も組織の立ち上げ時には現場に入ってコミットしたという。採用や人材確保をすぐに行えない間は、インサイドセールスの支援を行う外部パートナーUNITEに一部の業務を委託するなど、社内外のリソースを活用した。
「UNITEさんは我々の課題と狙いを理解し、施策を実行する上で必要な人材が足りていなければ人を派遣してくださいました。また、委託に際し、私がリーダーシップを執ってしまうとどうしても“縦”の関係になってしまいます。そのためUNITEさんには“横”で伴走してもらえるよう意識しながら体制を構築しました。外部パートナーにも関わらず、当社の社員同様、あるいはそれ以上の当事者意識が当社の組織変革を加速する触媒となりました」(石戸氏)
マーケティング部門の知見を他の部署にも横展開
2021年には目標であった前年度比200%超の商談化に成功したパイオニア。成果は数字ばかりではないという。石戸氏は改革の副産物として「社内の働き方の変化」を挙げる。
たとえば、以前のパイオニアでは、社内の会議でダッシュボードを活用する文化ではなかったそうだ。その結果「憶測ベースで議論が進んだり、非効率なエクセル作業を散見したりすることがあった」と石戸氏。しかし今や、マーケティングに関わるメンバーはほぼエクセルを用いず、ダッシュボードを見ながら会議や施策検討を行っているという。
「ダッシュボードを見て話し合うことは、マーケティング担当者だけの仕事ではありません。マーケティング部門が他の部門に影響を与えられると良いと思っています」(石戸氏)
成長を持続するため、外部から経験者を登用し、社内人材の強みと掛け合わせることで共に成長し、強い組織にすることを考えた石戸氏。しかし、パイオニアはメーカーとしての認知度が高い一方で、ソリューション提供を行うサービス企業としての側面はまだまだ認知されていなかったという。そこで、月に1度はメディアに露出するなど、マーケティング活動と同じ優先度で採用広報やダイレクトリクルーティングなどの採用施策にも注力。その他の要因もあり、多くのIT人材やベンチャー人材が採用に応募してきたそうだ。
商談化の目標達成のみならず「キーエンス、Salesforce、Apple、Amazonに比肩する事業推進力を持った企業」を目指し、持続的に成長していくための種をいくつも蒔いてきた石戸氏。今後も、ソリューションサービス企業としてのパイオニアの成長から目が離せない。