『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』は24時間で2,500万人視聴
配信動画市場の各プレイヤーが注力しているのがオリジナルコンテンツ制作だ。魅力的なオリジナルコンテンツの配信を通じて視聴者の拡大を狙っており、1シリーズに対する支出額も非常に大きくなるケースもある。
Amazonでは『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』シリーズがその一例だ。これまでの報道によると、Amazonは同シリーズの制作・放映のため、計7億1,500万ドル(約1,031億円)を支払ったと推定されている。テレビシリーズとしては史上最高額になると言う。このうち放映権の取得に2億5,000万ドルが支払われ、残りの4億6,500万ドルがニュージーランドでの制作費用とマーケティング/プロモーションに費やされた。
競合であるNetflixやHBOも『ロード・オブ・ザ・リング』のテレビシリーズ放映を狙っていたようだが、2億5,000万という額が決定打となり、Amazonが放映権を得ることになったと報じられている。
巨額の資金が投じられた『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』シリーズは、今後のAmazonのエンターテイメント事業の方向性を左右するほどのギャンブルであったとも言われているが、蓋を開けてみれば成功と呼ばれる公算が高まっている。
Amazonの発表によると、同シリーズ放映開始後24時間の視聴者数は2,500万人と、同社史上最多となったとなったことがわかったのだ。視聴したとカウントされるために必要な視聴時間や計測方法の詳細は明らかにされていないものの、この数字は世界240の国・地域における配信をもとに算出されたものであるという。
直接的な比較は難しいが、HBOが放映した『House of the Dragon』のアメリカにおける視聴者数が1週間で2,500万人に達したと言われており、『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』はこれにならぶシリーズとして注目度が高まっている。
エンタメ市場の成長可能性
PwCによると、世界のエンターテイメント/メディア市場は2021年に2兆3,400億ドルと前年の2兆1,200億ドルから2400億ドル増加した。今後は年率4.6%での成長が見込まれており、2022年に2兆5,100億ドル、2023年に2兆6,400億ドル、2024年2兆7,500億ドル、2025年に2兆8,400億ドル、そして2026年には2兆9,300億ドルに達する見込みだ。
また、エンターテイメント/メディア市場全体のうち、動画配信(OTT)市場では、2021年に791億ドル(約11兆4125億円)と前年比22.8%増という脅威的な伸びを記録。今後は成長率が鈍化するといわれているが、それでも2026年まで平均7.6%の成長率を維持する見込みだ。動画配信市場規模は、2026年に1140億ドル(約16兆4478億円)に達すると予想されている。
このように、世界のエンターテイメント/メディア市場は今後さらに成長を続ける見込みだ。市場全体が楽観的な見通しであることに加え、『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』の成功体験によってAmazonのエンタメ投資はさらに加速するかもしれない。
参考記事
- Insider Intelligence「Amazon annual revenue breakdown by segment in 2022」
- CNBC make it「Why Amazon put its $715 million ‘Lord of the Rings’ series in the hands of two first-time showrunners」
- The Wall Street Journal.「How Amazon Turned ‘Lord of the Rings’ Into the Most Expensive Show of All Time」
- VARIETY「‘The Lord of the Rings: The Rings of Power’ Premiere Draws 25 Million Global Viewers in First Day, Amazon Says」
- PwC「Global Entertainment & Media Outlook 2022–2026」
- PwC「Global entertainment & media revenues surge to $2.3 trillion; virtual reality sees 36% growth as gaming and esports are on pace to become a $324 billion business」