アンバサダー施策で大躍進を遂げたワークマン
デジタル接客力を向上させて大躍進した例として、井上氏はワークマンの事例を紹介した。
同社が販売している商品に、溶接職人が火花よけのために着用するヤッケがある。年間に3,000枚売れる商品だったが、ある時キャンプブロガーの自身のブログで「このヤッケを着ていると焚き火の際に安心」と紹介。すると、その年の販売数が5,000枚に伸びたという。
「そこでワークマンでは、このブロガーとコンタクトを取り、ブロガーの意見をデザインに取り入れたヤッケを発売。すると年間で10万枚の大ヒットとなりました。それまで職人ターゲットだったヤッケが、マーケットを変えたことで一躍大人気商品になったわけです」(井上氏)
この件をきっかけに、ワークマンはアンバサダープロジェクトを開始。井上氏は、「このプロジェクトの特徴はインハウスでキャスティングしていること、そして金銭的インセンティブがないことです」と語る。
まずアンバサダーは代理店などにキャスティングを頼むのではなく、どのような人が良いのか自社でリサーチし、直接声をかけている。そしてアンバサダーをお願いする際には、金銭のやり取りが発生した時点で情報が宣伝色に染まってしまうため、インセンティブを発生させていない。代わりアンバサダーは、自身のブログやSNSで公式アンバサダーという新たなタグとともに商品を紹介する機会が得られるほか、新商品をいち早く発信できるのだ。
無償にもかかわらず希望者殺到のアンバサダー
ワークマンが始めたアンバサダープロジェクトは、ブランディングに奏功しはじめた。インセンティブがないにもかかわらず、公式アンバサダーになりたいという人が増えてきたのだ。
「Instagramのハッシュタグには“ワークマンアンバサダーになりたい”“ワークマンアンバサダー志望”というハッシュタグをつけて投稿する人が増え、メディア記事では“WORKMAN 公式アンバサダーになれるかも知れない方法”といった記事が出るようになりました」(井上氏)
ワークマンがアンバサダーに提供した特別な体験により、ワークマン商品の写真を投稿してアンバサダーになりたい人が増える。その分ワークマン商品の露出が増えるという波及効果を生み出している。アンバサダーとはWin-Winな関係性が構築できおり、「公式アカウントとつながり、体験価値の向上を下支えしています」と井上氏は語る。