顧客体験価値の向上は、マーケティング部門だけでは達成できない
現在30ヵ国で約1,700店舗を展開、さらなる拡大を目指す丸亀製麺は、インターブランドジャパンの「顧客体験価値ランキング2022」で1位を獲得。2020年は圏外、2021年は16位、そして今年は1位と2年間で急激に順位を上げた。この2年間で、同社はどのような取り組みを行ってきたのか。
同社で取締役 マーケティング本部長を務める南雲克明氏は、「2020年より顧客体験価値No.1を会社のビジョンに掲げ、マーケティング・商品開発・DX・人事などすべての部門での戦略をビジョン実現につながるよう設計し、実行しました。顧客体験価値の向上は多くの企業にとって重要なミッションであり、同時に、マーケティング部門の最も重要な役割だと捉えています。まずはマーケティング部門の最重要課題と認識し、実現に向けた絵を描き、全社を巻き込んでいく。大前提として、マーケティング部門だけでは達成できません」と述べた。
南雲氏によれば、顧客体験価値の向上を実現するためには全社・各部門が持つ戦略を調整し設計する必要があり、すべての顧客接点を統合的に捉えた戦略を設計しなければ実現は難しいという。
だが、全社一丸となって取り組む以前に足並みをそろえるだけでも苦労する企業は多いだろう。南雲氏は、丸亀製麺においてどのように全社的な取り組みを推進したのか。
全部門を横断し「顧客体験価値No.1」に向けて戦略を設計
まず取り掛かったのが、「ビジョンドリブンの事業戦略」だ。マーケティング・商品開発・営業・店舗開発・人事など全部門の戦略を、ビジョンである「顧客体験価値No.1」の実現につながるよう設計したという。
「ビジョンに対し、実際にどうやって事業戦略をフィットさせたか。まずピラミッド型の設計図を用いて、こちらを前提に、部門間を横断し統合的な考え方で戦略戦術を考えられるよう準備しました」と南雲氏は説明した。さらに消費者理解・従業員理解を深めるためにフィールド調査のほか、様々なリサーチや営業部長とのワークショップなどの活動を実施。加えて、CX向上のための1つの手段としてのDXの推進も行った。
重要なのは、ビジョンと統合された事業戦略の全体像を「顧客起点」で描き、同時に各部門に理解してもらうようコミュニケーションをとることだ。そうすることで、結果的に企業としての成果が最大化される、そう肌で実感していると南雲氏は語った。