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パナソニック ホールディングスの新ブランドスローガン「幸せの、チカラに。」はいかにして生まれたか

 昨今では「パーパス」や「MVV(Mission・Vision・Value)」など、マーケティング施策の源流にあたる概念が重要視されている。しかしながら、組織の規模が大きく事業領域が広い企業ほど、指針を定める難易度は高いだろう。2022年4月に新体制へと移行したパナソニックでは、パナソニック ホールディングスがグループ全体のブランド戦略を策定。2年がかりの一大プロジェクトを率いた森井理博氏に、策定までのプロセスをうかがった。

P&Gとの仕事がキャリアの礎に

——まずは森井さんのマーケターとしての経歴を教えていただけますか。

 新卒で入社したのは電通です。マーケティング局をはじめ、様々な仕事を経験しましたが、大きな転機はP&Gを担当したことだと思います。電通に在籍していた26年のうち、10年は同社を担当していました。

パナソニック ホールディングス 執行役員 ブランド戦略・コミュニケーション戦略担当 パナソニック オペレーショナルエクセレンス 執行役員 ブランド・コミュニケーション担当 森井理博氏
パナソニック ホールディングス 執行役員 ブランド戦略・コミュニケーション戦略担当
パナソニック オペレーショナルエクセレンス 執行役員 ブランド・コミュニケーション担当 森井理博氏

 皆さんご存知のように、P&Gは世界に冠たるマーケティングカンパニーです。独自のマーケティングメソッドは数多く、それらをエージェンシーにも全部教えてくれました。「自分たちのメソッドを知った上で提案してほしい」というスタンスだったんですね。

 この経験は、マーケターとしての私のキャリアに大きな影響を与えており、今もインスパイアされています。当時クライアントサイドにいた方々は、今まさに日本のマーケティング界を代表する存在になっています。そのような方々に囲まれて勉強できたのは、貴重な経験でした。

 その後は、当時再上場を目指していた、あきんどスシローのCMOを務めたり、現在はANAホールディングスの子会社であるPeach Aviationでマーケティングと営業の本部長を担当したり。PwCコンサルティングでマネージングディレクターも務めました。

 これまでの転職は“ご縁”を重視して決めてきました。パナソニックへの転職も同様です。2020年に入社し、現在はグループ全体のブランド戦略とコミュニケーション戦略の策定をリードしています。

物心一如をスローガンにどう落とし込むか

——パナソニックは2022年4月に持株会社制へと移行し、パナソニック ホールディングスが7つの事業会社を束ねる新体制へと変わりました。新体制の始動にともない、新たなブランドスローガンを策定されたとうかがっています。

 これまでは「A Better Life, A Better World」というスローガンを掲げていました。現社長の楠見が経営基本方針を60年ぶりに改定するにあたり「“better”では不十分だ」という考えを示したんです。創業者である松下幸之助が追求していたのは“better”ではなく“究極の姿”。物と心がともに豊かな理想の社会、つまり「物心一如」を私たちも追い求め続けようと決めたのです。いわゆるパーパスと呼ばれるものですね。

 物心一如という難しい言葉を、現代風にわかりやすくコピー化・スローガン化するために、2つの分析をしました。1つは、幸之助の考え方の原点に戻ること。物心一如が基本ですが、幸之助の残した言葉を紐解いていくと「理想の社会の実現とは、幸せの実現だ」という真理にたどり着きました。

 もう1つは、世界の人が求めている価値観を知ること。博報堂が開発した「デジノグラフィカル サーベイ」いわゆるエスノグラフサーベイのデジタル版を用いて、SNSに投稿されている文脈をマイニングしながら分析しました。すると、幸せの価値観は国によって異なるものの、1つだけ共通項があったのです。それは「サステナブルハピネス」。健康や家族との時間、平和といった持続可能な幸せは、全世界共通の価値観でした。

 100個以上作ったコピー中で、私たちの思いを端的に表しているものが「幸せの、チカラに。」でした。変化する世界の中でも、お客様に寄り添い持続可能な「幸せ」を生みだす「チカラ」であり続けたいという私たちグループの存在意義を表現しています。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/16 09:00 https://markezine.jp/article/detail/40560

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