10の要素で「ブランディング」を体系的に整理する
――ブランド強度分析で用いられている10の要素は、あらゆる企業がブランディング戦略を考える時の参考になりそうです。
そうですね。この10の要素はそれぞれバラバラなのではなく、実は文脈として一貫性があるのです。文章にすると、このように整理することができます。
~強いブランドに備わっている10の要素~
社内においては、目指す姿が明確であり(志向力)、組織としてそれにコミットする仕組みを備え(結束力)、顧客の声に耳を傾けてニーズや想いを先取りし(共感力)、環境変化に柔軟かつ迅速に適応できるか(想像力)。社外においては、特徴的なブランド体験を提供し際立つ存在として認識され(独自性)、一貫性のあるストーリーを持ち(整合性)、顧客を巻き込みながらブランド体験を共に創り(共創性)、広くその存在が認識されて(存在感)、誠実に顧客目線で行動することにより(信用度)、顧客との間に絆を作れているか(愛着度)。
ブランド価値を高めていくために何をしたらよいのか? その打ち手を考えるときに、この10の要素の構造は役に立つはずです。実際にインターブランドジャパンの顧客企業の中にも、この10の要素のスコアを見ながら、来年は何を重点的に取り組むべきか、そのためにはどのような施策をすべきか、その結果がどうだったか、というPDCAサイクルを回されているケースがあります。
MarkeZineの読者のみなさんも、経営層の方や、プロダクトやサービス、事業のマネジメントにあたっている方など様々だと思います。後者のみなさんにとっては、ブランド価値や企業価値よりも、この10の要素のほうが業務活動の進化・発展に役立てやすいかもしれません。ただ、繰り返しになりますが、これらの要素にはすべて関連性があります。たとえば、ブランドの独自性に課題があるという場合、ブランドの目指す姿が明確でないから尖れないとか、顧客のニーズを先取りできていないから独自性が出てこないとか、その原因や改善すべきところは意外と社内にあるかもしれません。外向けのコミュニケーションや表現を変えても、実態が伴っていなければ、価値は変わらないわけです。
となると、やはりブランディングは企業全体で取り組むべき経営アジェンダであると言えます。ぜひ、MarkeZineの特集を通じて、自社のブランディングを見直してみていただければと思います。