【特集】2022年の急上昇ブランド~本質的なブランディングの核に迫る~
─ インターブランド「ブランド価値評価」の仕組み――強いブランドが有する10の要素とは?(本記事)
─ 先の見えない時代にこそ「ブランドの価値」が問われる。未来の競争力を高めるブランディングの在り方
─ 事業成長を通じて社会課題を解決する。味の素グループが全社で取り組んできた「ASV経営」の現在地
─ 選ばれ続けるブランドの確立を目指す。ANAが徹底した顧客起点で取り組むCX戦略
─ 信念であるパーパスを体現し、ブランド・お客様・社員を繋げていく。SK-Ⅱに学ぶ、ブランド体験の作り方
─ 技術と歴史が築き上げてきた、富士フイルム「らしさ」のブランディング
インターブランドの「ブランド価値評価」とは
――インターブランドは、グローバルでは「Best Global Brands」を、日本では「Best Japan Brands」を毎年発表されています。このランキングの作成で用いられているのが、ブランド価値を金額換算して定量化する独自の評価手法「ブランド価値評価」です。この記事では、この「ブランド価値評価」の仕組みから、ブランディングを体系的に捉えるヒントを探していきたいと思います。まずは、「ブランド価値評価」が世界でどのように使われているのか教えてください。
“ブランディング”あるいは“ブランド価値”というと、定性的で曖昧なものに捉えられがちです。しかし、我々インターブランドは、「ブランドは常に変化する事業資産である」という考えを持っています。ブランドの価値を金額換算して、定量化するという「ブランド価値評価」も、この考え方に基づいて行っているものです。
先日、グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2022」を発表しました。「Best Global Brands」はグローバル企業のCEOが注目する重要指標の一つとなっており、実際、マーケットに影響を与えることもわかっています。これはブランド価値と企業価値には相関関係があるということを、裏付けるものであるとも言えるでしょう。
ブランド価値と企業価値に相関関係があるという前提に立つと、「ブランド価値評価」は、まず経営の領域で活用いただけると考えています。ブランド価値評価ランキングを経営指標の一つとして使っているケースは多々あり、たとえば味の素さんは中期経営計画の中で目標指標の一つに設定されています。
――経営指標としてブランド価値を取り入れるメリットは、何なのでしょうか?
企業活動の中には、様々な事業活動もあれば、コーポレート的な活動もあります。それらの活動をそれぞれ評価することももちろん大事ですが、経営の観点では「それらの活動が最終的に企業価値に繋がっているか?」が問われます。様々に行っている活動を束ねて、評価することが重要になるわけです。事業活動/企業活動から社会価値が生まれ、そこから経済価値(売上など)が発生する。それらをすべて統合するものとしてブランド価値を設定することで、ミクロとマクロの相関関係が整理しやすくなるというのが、経営指標にブランド価値を取り入れることによる最大のメリットです。「自分の業務活動が会社や社会の役に立っている」あるいは「ブランド価値があるからこそ、自分たちの活動が後押しされている」など、社員の方々のエンゲージメントを高めるような波及効果もあるでしょう。