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第106号(2024年10月号)
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COLUMN

ベテランマーケターのセカンドキャリア

 「人生100年時代」と言われる現代。マーケターとしてキャリアを重ね続けた先には、どんな道が拓いているのか。マーケティングの実務を離れて自社の役員職に就いたり、CMOクラスの専門人材として様々な企業を渡り歩いたりすることだけが、ベテランマーケターの終着点ではない。35年のマーケティングキャリアを経て独立した山本浩一氏は、元電通のミドル層が集う新組織「ニューホライズンコレクティブ」のメンバーとして活動している。本稿では同氏のキャリアを振り返るとともに、ベテランマーケターが長く活躍し続けるためのヒントを提示する。

規格外の案件は成長のチャンス

 私のマーケティングキャリアの始まりは36年前──電通に入社し、新入社員研修を経てマーケティング局に配属された1986年7月です。帰国子女の私は語学力が最大の強みだったため「海外向けの部署に配属されるのだろう」と思っていました。ところが蓋を開けてみると、配属先はマーケティング局。新入社員の間で噂が広まるくらい、意外な人事でした。

 私の適性を踏まえた采配だったのかは不明ですが、結果的には36年続くキャリアのスタートとなる、素晴らしい“あたりくじ”を引いたことになります。思い返すと、その後も様々な偶然に後押しされながら、私のマーケティングコンピタンスとキャリアは形作られていきました。

 配属後は、当時の電通では珍しい工学部卒の経歴を理由に、テクノロジー系の案件を多く担当しました。そこから転じて、業務プロセスが確立されていない「規格外」の案件を丸投げされることも。この経験は、マーケターとして成長するチャンスでした。新人マーケターが確立されている仕事のやり方を学ぶことはもちろん大切です。ただし、一歩間違えるとそのやり方が刷り込まれすぎて、マーケターとしての進化を妨げる場合もあります。私の場合は規格外の仕事を多く任されたことによって、課題の解決を一から考える習性が身につくとともに、常に新しいマーケティングを模索する体質になった気がします。

グローバルな視座を養い井の中の蛙状態を脱する

 語学力が幸いし、多くのグローバル企業のマーケターと仕事をともにさせていただいた経験も大きかったです。グローバル企業のマーケターは日系企業のマーケターに比べ「マーケティングを進化させよう」とする意識が総じて高く、常に新しいマーケティングのアプローチを志向します。マーケティングは競合との相対で結果が決まるもの。いくら“良い”マーケティングをしても、相手も“良い”マーケティングをすれば勝てません。勝つためには、相手の一歩先を行くマーケティングを実行しなければならないのです。グローバル企業のマーケターからは、マーケティングイノベーションの心構えを学ばせてもらいました。

 電通に入社して約12年が経ったころ、しばらく休止していた海外留学のプログラムが再開したため、コロンビア大学へMBAを取得しに行きました。留学のタイミングとしてはかなり遅く、そのうえ留学先はファイナンス系のカリキュラムが中心の学校。しかしながら、この境遇が結果的に功を奏しました。マーケティング領域で“井戸の中の蛙”と化していた自分が、経営やファイナンス、学術の視点でマーケティングを捉えられるようになったからです。もっと早いタイミングで留学していても、マーケティングを専門とする学校に留学していても、これほど大きな転換点は迎えていなかったと思います。これもまた、幸運な偶然です。

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この記事の著者

山本 浩一(ヤマモト コウイチ)

 東京大学工学部卒、1986年に電通入社。外資×テクノロジーの分野で主に戦略マーケティングとして活躍。1999~2000年、米コロンビア大にMBA留学。その後、電通総研、クリエイティブ部門、社長室を経て退職。2021年1月より「ニューホライズンコレクティブ」に参画。専門領域はグローバル・ブランド・マネジメント、テク...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/05 09:00 https://markezine.jp/article/detail/40653

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