Googleの不得意分野に、自社事業のチャンスが
さて、ここからが本題だ。10月にはピチャイCEOが日本の総理を握手訪問して、Googleのデータセンターへの投資を発表した。8月にそのクラウドのサービスである「Google Cloud IoT Core」を(そっと)打ち切り発表した直後、の新規発表である。
「Google Cloud IoT Core」は、2017年からサービスを開始していたので、約5年での見切りだ。このサービスは、IoTデータをリアルタイムで収集・処理・分析・視覚化するためのソリューションを提供し、運用効率の向上をサポートするという「フル・マネージド」の事業概要だった。
「Google Cloud IoT Core」のライバルには、Amazonが「AWS IoT Core」、Microsoftが「Azure IoT Hub」として知られる同様のサービスを提供している。この「Cloud IoT Core」の打ち切りの例と前出の1・2の例を合わせてみると、Googleの不得意分野が見えてくる。これらに共通するのは、Googleは「手(人手)がかかること(マネージド・サービス)」は苦手、の雰囲気だ。
たとえば、クラウドに隣接する日本のSIer企業・事業に代表される受注業務は、「デジタル先端」のように見えるが、意外にも「手がかかる」ことで知られる(手ばかりかかる、とも)。別例では、テレビ局の番組と連動する「CTV広告」は、内容審査から年間基準の買付など「手がかかる」のも既知だ。これらの「非常に手がかかる」分野をGoogleが苦手とする傾向が見える一方で、先例のAmazon、Microsoft、そしてAppleやTesla、中国系BAT企業などは引き続き厚い投資をしているという大きな区分も見ておきたい。
Googleのキッパリ姿勢がシグナル
このGoogleのキッパリとした姿勢を裏面から見れば、「マネージド・サービス」は日本企業においては「勝手口のサブちゃんモデル」のごとく「むしろ得意」な分野かもしれない。Googleが興味を示さない小規模な事業、言うなればユーザーが面倒と思うところ、かゆいところに手が届くような代行事業が「感謝(事業の飴玉)」になり得る。まるでGoogleがその「仕分けのシグナル」を放出してくれているかのようだ。
「どこからが小規模で、どこからが大規模なのか」については、筆者の定義で「日本市場に閉じている」ビジネスならば、おおむね「小規模」の範囲としている。たとえば、GoogleやToyotaならば日本に閉じていない大規模スケール化(世界での最適化)に進む。一方、日本を土台にする楽天やイオンの事業やラーメン・チェーン、ABEMAのブランドならば、日本に閉じていても十分に成り立つ「小規模」という区切りだ。二極対比にて例としたが、「グローバル市場と日本の地方を足して2で割る」というような派生選択も十分あり得る。
GoogleがCookie技術に関して、「やめるぞ」→「延期するぞ」→「延期もさらに撤回するぞ」との調子を繰り返すのは見慣れていた(笑)。その上で、クラウド事業での日本への投資と一転した今回の発表こそ、巨人Googleの「気持ち」に寄り添えば、読者の足元に役立つ「シグナル」を示してくれているように見える。Googleが教えてくれたシグナルから、「日本の」足元で無限の(100以上の)選択肢の組み合わせ、アイデアを考えてみよう。
*為替レートは当時のもの