離反していくユーザーにばかり目を向けていないか
佐藤(MOTTO):アプリゲームジャンルではヒット作が多数生まれている一方、うまく軌道に乗らなかったタイトルは早ければリリースから1ヵ月でサービスが終了してしまいます。要は、PDCAを回す暇もなく失敗が決まってしまうわけです。宮本さんの新定石の背景には「出してみないとわからない」では済まないゲームジャンルの特性があるのかもしれません。
宮本(バンダイナムコ):データをリアルタイムに追える点もアプリゲームジャンルの特性であり、強みでもあると思います。当社ではアプリゲーム事業のほかに家庭用ゲームなどの別事業も展開しているのですが、アプリゲーム事業で取り組んでいるKPI予測に別事業でもトライしようとしているところです。
佐藤(MOTTO):近藤さんの二つ目の新定石も教えていただけますか。
近藤(Colorful Palette):「ロイヤルユーザーファースト」です。一般ユーザーよりコアファンの売上が占める割合の方が圧倒的に大きいことは、今さら僕が言うまでもありません。ロイヤルユーザーの方々に、よりロイヤルになってもらう方法を考える作業に、費用や思考コスト、人的リソースを割く必要があります。
言うのは簡単ですが、実行するのはやはり難しいです。ロイヤルユーザー以外は「離反しやすいユーザー」と言えます。人はどうしても恐怖心が勝って、自分が手塩にかけて育てたプロダクトやブランドから離れていく人たちにばかり意識が向いてしまうんです。
目の前に離れていく人がいても「僕たちが大事にしなきゃいけないのはロイヤルユーザーだ」と強い意志を持ち、その意思をチームに伝播していくことは大変です。
ユーザーの「面白い」が最強の広告
宮本(バンダイナムコ):ロイヤルユーザーをどう特定しているのかが気に知りたいです。たとえば、ファンミーティングにいらっしゃるお客様や、大会を実施してその上位にいらっしゃるお客様のことなどでしょうか。
近藤(Colorful Palette):カテゴライズは必要なので、最終的にはKPIに落とし込むのですが、究極のロイヤルユーザーは自社のサービスやプロダクトが本当に好きで、長期的にお金を払ってくれる人ですよね。お金を払っていただけないと、僕たちもサービスを継続できません。
ただ、ロイヤルユーザーの中にも様々な性質を持つ方がいます。たとえお金を払ってゲームを長時間プレイしてくれていても、コミュニティに悪影響を及ぼすユーザーを僕はロイヤルユーザーと定義できないと思います。そういうイレギュラーはありつつ、大事なのは相手と対峙してすこし話しただけで「この人はロイヤルユーザーだ」とわかるようになるまでイメージを固めることです。
佐藤(MOTTO):ロイヤルユーザーファーストの方針でありながら、なぜプロジェクトセカイは新規ユーザーが非常に多いのでしょうか。
近藤(Colorful Palette):前提として、プロジェクトセカイのお客様の多くはデジタルネイティブの若い世代です。ネットリテラシーの高い若年層は、自分がシンパシーを感じる人や友人のコメントをきっかけに購買行動へと至ります。つまり「面白い」「すごい」と言ってもらうことが一番の広告になるわけです。
ゲームを提供する人たちも、自分たちが顧客として消費活動する際は、広告より口コミを信用していると思います。しかしながら、いざ自分たちがサービスを提供する側に回ると、その考え方が抜け落ちてしまう。「面白い」「すごい」と言ってもらうための仕掛けはありません。そう思ってもらえるプロダクトをつくるのみです。
佐藤(MOTTO):今日紹介いただいた四つの新定石は、マーケティングの本質でありながら“ちゃんと”実行するのは相当大変だと理解しました。アプリゲームのマーケターはもちろん、それ以外のマーケターの方にも今日の内容を参考にしていただけると嬉しいです。お二人とも、貴重なお話をありがとうございました。
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