ファンケルや花王などソーシャルコマースで先手を打つ企業
——日本企業におけるソーシャルセラーの活用例について教えてください。
ファンケルさんでは2020年から現在に至るまで、自社の従業員がライブコマースを行っています。「ファンケルの従業員に対するユーザーの信頼に基づいた購買形態」という点では中国のソーシャルコマースに近い事例といえるでしょう。

花王さんでは、インフルエンサーではなく、当社が抱えるSNSで活動するアンバサダーを介して、自社の商品販売につなげています。彼らは、メッセンジャーアプリ「微信(ウィーチャット)」や通販サイト「淘宝網(タオバオ)」を通じて、中国ユーザー向けに商品を紹介・販売しています。
——今後日本のマーケターにはどのような備えが必要か、アドバイスをお願いします。
まず、越境ECをはじめ今後ますます「国」というドメインを超えたビジネスモデルが主流となることが予想されます。そして、一国で事業を完結してしまうよりもグローバル展開をした方が、はるかに多くのビジネスチャンスが見込めます。この事実に対し、より意識的であるべきでしょう。
進むボーダーレス化 日本のマーケターが持つべき視点とは
——主に国内で事業を展開している企業のマーケターも、越境ECやソーシャルコマースを活用してグローバル展開を見据えるべきでしょうか。
はい。そもそも日本の人口は縮小する一方です。国内市場がシュリンクする中で日本企業が生き残るには、海外に打って出る必要があります。この事態に本気で向き合わないと、グローバル市場のパイのほとんどを他国の企業・ブランドに奪われてしまいます。そういった意味で、企業が国内に限定してマーケティング施策を検討することには非常に危機感を覚えます。あらゆる企業のマーケターの方に「日本から世界に向けてどう発信していくのか」という視点を持っていただきたいと思います。そうでないと、おそらく国内におけるブランド力も徐々に弱まってしまうのではないでしょうか。
しかし、ボーダーレス化は脅威であると同時にチャンスでもあると思っています。その活路を開くものこそソーシャルコマースです。
——ソーシャルコマースを活用することで、日本企業のグローバル化はより進むでしょうか。
おっしゃる通りです。日本の良い商品をまだお届けできていない国や地域があるはずです。越境ECの波に乗りソーシャルコマースを活用することで、日本にいながら海外の人に自社の商品を届けられるチャンスと捉えるべきでしょう。