参加者の登録数だけでなく「アクション率」を追う重要性
——社員の方々がファンコミュニティを見るというのは、コミュニティを立ち上げてから生まれた習慣ですか。それとも元々社風としてファンの意見を聞く文化があったのでしょうか。
ファンケルグループ全体がお客様をとても大切にする会社で、お客様起点の考え方が社員全員に伝わっています。ダイレクトマーケティング主体ということもあり、お客様に直接商品をお届けし、お客様の反応やお声を確認することが習慣になっていたという点も大きいでしょう。

——ファンコミュニティの立ち上げや運営に当たってどのような苦労がありましたか?
各社のファンコミュニティの導入においては、売上貢献が可視化しにくいため二の足を踏むという話も聞きます。ですが、アテニアではそういったことは全くありませんでした。ファンとのつながりから新たな価値を創出するというチャレンジに対して、全社が前向きにとらえていました。
運営していくうえでのステップとして、まずは「登録者数を増やす」ということを意識しました。次にコミュニティ登録者のLTVを分析し、ファンの心理や購買行動がどのように変化しているのかを確認していきました。
登録者数は会報誌やメールマガジンなどで年間5万人ずつくらいのペースで増えていき、1人1人のLTV向上に寄与していることも確認できました。次の段階として「見ているだけでなく、積極的に投稿やアクションをしてくれる人を増やしていこう」という目標を立てました。
導入したコミュニティプラットフォームでは、SNSの「いいね!」に該当する「拍手」というアクションがあり、拍手する率を高めていくことにしました。アクション率が上がれば、多くの人がそこにコメントを残したくなります。多くの共感が生まれる体験から、また皆さんがコメントしたくなるという循環が生まれていきました。その循環の中から様々な本音が見えてきたことで、商品開発やコミュニケーションが活かされるようになり、今ではさらにコミュニティのステージが上がったと感じています。
企業色を出さない運営でファンの本音を引き出す
——ユーザーの方が本音を言えるようにするため、どのようなことを意識されましたか?
まず企業色が出過ぎないようにしています。コミュニティ内に「透子(とおこ)」さんというキャラクターを作り、私たちアテニアからのメッセージは透子さんから発信する形にしました。
また発信内容も、商品の特徴のみを訴求するのではなく「この商品を開発した背景にはこんな思いがある」というように、モノ軸ではなくコト軸で話すことを意識しています。社員がコミュニティのなかで愛用している商品を紹介する際には、「私の洗面所です」とか「バスルームはこんな感じです」というように、いち生活者としての等身大の姿を見せるようにしています。
ファンコミュニティ歴が短い方々にも楽しんでいただけるように、テーマを決めて川柳を募集したり、透子さんと同じくコミュニティキャラクターの「テニーちゃん」をサイト内で探していただくゲームを企画するなど、コミュニティ内を気軽に回遊したり、投稿できるような仕掛けも行っています。
——今後のコミュニティの展開についてお聞かせください。
本音と共感がうまれるファンコミュニティの特性とファンとの信頼関係を活かして、新たな価値を作り出していきたいと思っています。
その一つとして考えているのは、女性のエンパワーメントです。私達がターゲットとしている40代前後の女性は、家事や育児、仕事などを通して様々な葛藤を抱えており、ご自身の肌や心のケアが後回しになっている方が多いと感じます。
同じように悩み、葛藤を抱える女性同士の交流を通して、「こうあるべき」という思い込みから解放し、日々の生活を前向きに過ごせるきっかけを作っていきたい。ファンコミュニティは、そういった新たな可能性も秘めた空間だと考えています。