まずは 「何となく好き」なブランドを目指す
「ブランドは自然にできる」「ブランドは勝手にできる」と説明したが、それはつまりブランドをつくるのは非常に難しいことを意味し、企業や商品の認知を獲得したり、ブランド(イメージ)を意図的につくっていったりする必要がある。その際に知っておきたいのが、ブランドには階級があるということだ。
ブランドは、「知っている」「嫌いではない」「何となく好き」「約束」という4つの階級からなっている。先ほど説明した通り、知らないものはブランドではない。逆に言うと、「知っている」以上はすべてブランドである。

「ブランドというと、とてもありがたいもの、すごいものといった印象があるかもしれませんが、知っているだけでブランドであるという点が実務家ブランド論のポイントです」(片山氏)
「知っている」レベルでいうと、たとえばコンビニでミネラルウォーターを買う場合。知っている商品と知らない商品が同じ100円で売っていたら、多くの人は知っている方を買うのではないだろうか。知っているということには、価値があることがわかるだろう。
「嫌いではない」レベルは、知っているだけでなく、その商品に関する情報を持っているということ。そのうえで「別にどうも思わない」「嫌いではない(選択肢には入る)」と感じるブランドである。「何となく好き」レベルになると、選択時に有利になる。先ほどのミネラルウォーターの例でいうと、知っている商品が100円、何となく好きな商品が110円だとしたら、何となく好きな商品を買う人が多いと予想できる。
「約束」レベルは、確実に選択してもらえるブランド。「スマホならA社の製品しか買わない」というブランドだ。ここまでのレベルのブランドはそう多くないので、まずは「何となく好き」なブランドを目指す方が現実的だろう。
自分たちがどんなブランドをつくりたいかを決める
どんなブランドをつくりたいかを明確化するために、書き出してほしいポイントは3つ。「Brand Identity(存在価値)」「Brand Purpose(存在意義)」「Brand Personality(人格点個性)」だ。
Brand Identity(存在価値)には、企業や商品がこだわっていることを言葉にする。Brand Purpose(存在意義)には、企業や商品が世の中からなくなったら、どんな損があるのか聞かれたときの答えを、Brand Personality(人格・個性)には、企業や商品はどんな個性を持っているのかを書こう。
「ダイキンの場合、Brand Identity(存在価値)は、空気に可能性があると信じる企業。Brand Purpose(存在意義)は、空気であらゆる課題を解決する。Brand Personality(人格・個性)は、果敢なリーダーと置き換えることができます。つまり、空気で何かよいことをしてくれるのではないかと思ってもらうことで、嫌いではない、何となく好きなブランドを目指しているのがダイキンです」
次にブランドをどうつくっていくかを考える。ブランドは広告や店舗、口コミ、接した従業員など様々なタッチポイントでできている。たとえばコンビニでは店舗の情報が強いなど、業態やサービスによってどのタッチポイントが強いのかを見定める必要がある。
そして、これらのタッチポイントを通じて伝えていく際に大事なのが、ブランドシンボルと言われるもの。ブランドはタッチポイントから情報が頭の中に入った後、覚えられたり忘れられたりすることでできていく。ブランドシンボルにブランドは貯まっていくので、しっかりと表示させながら伝えていくことが大切だ。
