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“便利“が当たり前となったリテール、その次の体験価値とは?NY有名旗艦店の例から考える

 2023年1月15日~17日に米国NYで開催された世界最大規模の小売の祭典「NRF 2023 Retail's Big Show」(以下、NRF2023)の主要セッションや展示の様子と、複数のブランド旗艦店舗を実際に筆者が訪れた体験から、小売業界へのヒントをお伝えする本連載。第3回では、テクノロジーによる効率化と体験価値の創造について、オンライン/オフラインの顧客体験を中心に紹介する。

利便性だけでない“+αの価値”をどう作るか

 近くの店舗の在庫状況をアプリで確認した上で注文し、店舗や店舗の駐車場でピックアップするBOPIS(Buy Online Pick up In Store)や、注文後の当日数時間以内の配送は米国のカスタマーにとって当たり前の選択肢となった。重要なことはテクノロジーの導入自体ではなく、カスタマーが「状況によって便利に選択できる」ことだ。

 現在米国ではウォルマートやホールフーズなど大手スーパーの他、CVSやUlta Beauty(アルタビューティ)などのドラッグストアやコスメ・雑貨ストア、Macy’s(メイシーズ)やNordstrom(ノードストローム)などの老舗百貨店に至るまでにBOPISが導入されている。

ロサンゼルス郊外のウォルマート カーブサイドピックアップ。3年前(2020年)に筆者が訪れた際には既に導入されていた(撮影:筆者)
ロサンゼルス郊外のウォルマート カーブサイドピックアップ。3年前(2020年)に筆者が訪れた際には既に導入されていた(撮影:筆者)

 米ウォルマートのNRF 2023のセッションでは未来の配送のあり方として、配送はもちろん返品まで対応するドローンの活用について語られた。さらに同セッションの対談の中で中国大手EC・物流企業JD.comのハーラン・ブラッチャー氏が、空飛ぶドローンの他に、道路を走る無人の小型ランディング・ドローンについても言及。通常の道路はもちろん、小型ゆえに狭い地下通路や倉庫内を効率良く走ることができる。しかも、すべて電気か水素による電気自動車でサステナブルの面でも貢献する。

 このドローンは、既にコロナ渦においてロックダウンされた地域への食品や医療物資を届けるのに活用されていたという。もちろんカスタマーにとっては早く、便利に、どこでも受け取れる点がメリットである。

 生活者にとって便利に配送手段を選べることは購買時の利便性の一つだが、こういったテクノロジーは一定数の生活者へ根付き、今後も引き続き進化していくことが予想される。こうした便利で効率的な購買体験が進んでいる一方で、第1回で触れたように、カスタマーエンゲージメントを高める効率だけではないユニークな体験価値をどのように作っていくかも非常に重要だ。

 ここからはどのように様々な体験価値を作っているか事例を見ていこう。

自分に合った商品を楽しく、早く、最適に選べるナイキ

 ナイキではカスタマーにとって最適なものを見つけられる体験にこだわっている。ニューヨークマンハッタン5番街の一等地に位置する「Nike House of Innovation 000」は、世界有数のナイキのフラグシップ店舗だ。そこでは専用アプリを介してクイックかつ便利なショッピング体験が提供される。

 店舗に近づくとアプリが認識し、その店舗で使える機能を表示する。たとえば、その場でチェックアウトができる機能。他にも、商品に付いているQRコードを読み取りサイズを指定すると、店舗内の指定場所まで商品をスタッフに運んできてもらえる。

 さらに店舗内では、ナイキの世界観の中で楽しみながら最適な商品を選べる体験が用意されている。たとえば入店してすぐ横には、ド派手に光るバスケットボールのコートのようなエリアがある。ここではドリブルやシューティングなどの動きをするゲームが楽しめるようになっていて、店内のシューズを実際に履いて、オフェンスの動きをしながら履き心地を試すことができる。

5階建ての店舗で、各フロアに続く階段にはサイネージが設置されており、新商品の情報やナイキらしい雰囲気作りを担っていた。(参照元:Nike House of Innovation 000)
5階建ての店舗で、各フロアに続く階段にはサイネージが設置されており、新商品の情報やナイキらしい雰囲気作りを担っていた。(参照元:Nike House of Innovation 000

 上階では自分だけのオリジナルシューズを作ることができる。また、ナイキウェアを着たマネキンは様々なサイズ・体形で、ナイキが掲げるダイバーシティインクルージョンの理念「If you have a body, you’re an Athlete. (体さえあれば、誰でもアスリート)」が体現され、自分の体形に近い服を着たイメージを投影しやすくしている。

 こうしたブランドの世界観の中で、アプリによる利便性だけでなく、店舗内の体験を通してあらゆる角度からカスタマーにとって便利に最適なものが見つけられる体験を提供している。

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この記事の著者

西 湧太(ニシ ユウタ)

 電通デジタル CXトランスフォーメーション部門 CXUXデザイン事業部 リテールエクスペリエンスグループ兼グローバルビジネス部門CXグループ

 電通デジタル入社後、小売・金融・製薬・通信などの幅広い業界の国内クライアントおよびグローバルクライアントにてUXデザインに必要な、リサーチ(定量/インタビュー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/16 09:30 https://markezine.jp/article/detail/41394

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