特別なモノ、コト、ヒトに偶然出会うショーフィールズ
ユニークな体験価値を提供する例としては、体験特化型の店舗が注目を集めている。「The most interesting store in the world.(世界一おもしろい店)」をコンセプトにしたShowfields(ショーフィールズ)もそのうちの1つだ。ショーフィールズ自体が商品を売っているのではなく、D2C(直販)ブランドがショーフィールズに出店して商品を売っている。また商品だけでなく、アート作品の展示やイベントが開催される。
ショーフィールズの一番の特徴は、生活者が予期せぬおもしろいものに「偶然」出会える場を提供している点だ。店舗にバラエティ豊かな商品を置くことでカスタマーと商品が「偶然」出会うことは当然だが、他の小売店舗との違いは何か。
ショーフィールズの「偶然」の文脈と空間の作り方に秘密がある。筆者はNY・ブルックリンの店舗を訪れた。所感も含めて紹介したい。
まず、ユニークなブランドやプロダクトを単に集めたのではなく、取り扱うブランドやアーティスト、イベントがあまり知られていない地域のものであったり、アーティストも社会的にマイノリティなジェンダーや人種など、社会的なテーマと関連するものが多い。ただし、社会的なテーマだからといって、ある種の堅苦しさはない。プロダクトや空間そのものや、魅力的なアーティストなどの人との出会いを楽しむことを通して、「偶然」それらのテーマに触れる機会を提供している。

「偶然」を演出する3つの仕掛け
ショーフィールズに展示されるプロダクトや企画に加えて、店舗の設計にも「偶然」を演出する特徴的な仕掛けが3つある。1つ目は、店内が一方通行になっている点だ。カスタマーは必ず一通り店舗内をぐるりと回るようになっている。様々なブランドやアートに触れ、カスタマー自身の興味やインスピレーションが刺激される機会を最大化する設計がなされているのだ。
2つ目は、空間内をいくつかのコンセプトに分けてプロダクトやアート作品を展示している点だ。たとえばブルックリン店舗では、巨大な足のアートがあるエリアはファッションを通してインスピレーションを得る空間であり、食のエリアでは様々な種類のローカルフーズやお酒が並べられている。バーのようなエリアもありスタッフと話しながら試飲もできる。商品を無造作に展示するのではなく、ある種の強制された動線の中に空間としてのメリハリをつけることで、体験として飽きず楽しいものになっている。
3つ目は、展示されている商品のQRコードを専用アプリで読み取ると、その商品自体のストーリーが見れたり、ECで購入ができること。その場で決済して購入することもできるが、後で考えて、やっぱり欲しいとなったときに手に入れられるようになっている。

ショーフィールズは様々なモノ・コト・ヒトに店舗空間の様々な切り口から「偶然」を仕掛けている点でユニークであり、店舗体験の価値を置いている。またECに導線をつなぐことにより「出会いは店舗で、購入はオンラインで」との住み分けがなされている点も注目だ。