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グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

米国企業が進める本気のサステナビリティ、キーワードは「パートナーシップ」と「CX」

サステナビリティとブランド体験が一体となるD2Cコスメ「グロッシアー」

 グロッシアー(Glossier)はNY発のコスメのD2Cブランドだ。「リアルな生活に根付いたコスメティック」をコンセプトにした絶妙なおしゃれさがZ世代、ミレニアル世代にカルト的な人気を誇る。

 メディアとして機能する自社SNSのフォロワーは約270万人。有名モデルがコスメの宣伝をしているのではなく、フォロワーに近い年齢層のスタッフやコスメの開発者、パッケージデザイナーなどが投稿に頻繁に登場し、商品の魅力を発信している。

(参照元:グロッシアー公式Instagram )
(参照元:グロッシアー公式Instagram @glossier

 商品自体もオーガニックなもので、成分の開示や工場の様子などの制作プロセスも投稿されている。またコスメ制作過程における動物実験などの動物虐待のないことを証明する国際認証機関Leaping Bunny認定も受けている。

 グロッシアーのファンたちもまたサステナビリティへの関心が高い。プロダクトがどのような成分で、どの生産地域で調達され、どのように作られているか、公正な取引によって作られているか、などのブランド側からの情報開示は人気を集める要因になっている。

 実際に数年前にグロッシアーがラメ入りのコスメを発売した際、そのキラキラ光る素材にプラスチックが含まれていることがわかるとSNSを中心にファンから批判され、すぐさま販売を中止した。

 ファンからもグロッシアーとしてのブランドのあるべき姿が確立されており、ともにサステナビリティを創っているのだ。

特別感・期待感・サステナビリティが揃う店舗体験

 グロッシアーは実店舗もいくつか展開している。筆者は実際にNYブルックリン地区にある店舗に訪れたが、そこでの体験も非常にユニークであった。

 入店するとまずグロッシアーピンクを身にまとったスタッフが出迎えてくれる。店頭に在庫は置かず、広いスペースにかなりの種類のテスターのみが配置されている。実際に店舗内で商品を試せるよう鏡やコットンが用意されている他、簡単におしゃれな自撮りができる壁などもあり、プロダクトをあらゆる角度から体験として楽しめるのと同時に、「買ってみたらイメージと違った」という残念な気持ちや無駄が発生しないようになっている。

 ここまで読むと、ショールーミング店舗だと思うかもしれない。だが、ここからが注目ポイントだ。購入したい商品をスタッフに伝えると、レジに並ぶことなくその場で決済し、受け取りカウンターで待つ。「どれくらい待つのかな」と思い、ふとカウンターに目を向けると、在庫を保有している上階の倉庫から受け取りカウンターまで設置されたユニークなベルトをつたって、商品入りの紙袋が1つひとつ降りてくる仕掛けだ。

グロッシアーのショッピング紙袋。天井のベルトから降りてくる。(参照元:グロッシアー公式Instagram)
グロッシアーのショッピング紙袋。天井のベルトから降りてくる。(参照元:グロッシアー公式Instagram @glossier

 その様子を見ているだけで楽しいが、同時に特別感と期待感も醸成される。さらにその紙袋も「捨ててはもったいない」と思わせるようなグロッシアーを体現した映える見た目であり、来訪する際には再利用することも可能だ(紙袋以外にもエコバッグもある)。

 生活者はサステナビリティを意識しているものの購入に結びつかず、サステナビリティを日常的に取り入れるのが難しいことを冒頭で触れた。しかし、グロッシアーでは、ブランドに共感するファンが製品や体験を通してファッションの一部として、いつのまにかサステナブルな活動に参加していることが特徴的だ。

 このようにカスタマーというパートナーの参加が必須となるサステナビリティには、その前提となるブランドや製品の「体験」に共感できるかが非常に重要だと言えるだろう。

 今回はサステナビリティについて、NRF2023セッションとNYの店舗事例から、キーワードとなる「パートナーシップ」と「CX」を中心に様々な角度で紹介した。第3回はNRF2023と小売店舗からの事例の総括をお伝えする。

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この記事の著者

西 湧太(ニシ ユウタ)

 電通デジタル CXトランスフォーメーション部門 CXUXデザイン事業部 リテールエクスペリエンスグループ兼グローバルビジネス部門CXグループ

 電通デジタル入社後、小売・金融・製薬・通信などの幅広い業界の国内クライアントおよびグローバルクライアントにてUXデザインに必要な、リサーチ(定量/インタビュー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/10 13:44 https://markezine.jp/article/detail/41417

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