自分の人生における成功とは何か?
自分の人生を1つのプロジェクトに見立て、何を成功とするのか、何歳までに何を達成しないといけないのかをプランニングすれば、人生の成功確率を上げられるのではないか。そう気付いてから、長谷川氏はまず自分にとっての成功を定義するため、自分自身と向き合い始めた。
「僕の場合は、人生最期の日に、孫に『じいちゃんの人生かっこいいだろ!』と言えればいいということに気づきました。ある意味、自己中心的ではありますよね。ですが、見栄などを取っ払った正直な気持ちに気づくまで、しっかり自分と向き合うことが大事です」(長谷川氏)
成功の定義を決められたら、プランを立てていくわけだが、この時「すべて計画通りにはいかない」ということを忘れてはいけないという。計画通りに事が進まず、人生の岐路に立つようなことは誰にでもある。そんな時は、プランを軸に決断していけばいい。また、プランがあることで理想と現実のギャップを把握し、その差を埋めるための方法も考えやすくなる。
今の仕事で残したい「伝説」を考えてみる
「人生に加え、もう1つプランニングをおすすめしたいのは、自分が残したい伝説についてです」(長谷川氏)
P&G時代、ASEANエリアのヴァイスプレジデントから、長谷川氏は会う度に「今のこの仕事で、君が残したい伝説はなんだ?」と問われていたという。仕事に対して全身全霊で向き合っていると自負していた長谷川氏も、この問いには言葉が詰まった。ただ、何度も問われる中で、徐々に解像度が高まっていった。この視点はP&Gを離れた後も活きており、たとえば楽天では「何を成せば楽天の株価を上げられる仕事ができるか」をいつも考えていたという。

伝説と聞くと、多くのビジネスパーソンにとっては遠いものに感じるかもしれない。長谷川氏は、「会社の価値に貢献するなど良い方向での爪痕を残すにはどうすればいいか」「目の前の実務で何を成し遂げたいのか」を具体的にイメージするとよいだろうとアドバイスした。
「どのような人生にしたいのかという中長期的なプランと、今の仕事でどのような伝説を残したいかという目の前の実務に向けたプランを並行してぜひ考えてみて下さい。ただ、こういう話をすると『色々状況が変わるから、プランを立てても無駄では?』とまっとうな意見をいただくことがあります。ここでアメリカの大統領を務めたアイゼンハワー氏の言葉を借りますが、彼は『Plans are worthless, but planning is everything』という言葉を残しています。計画自体に意味はないかもしれませんが、ゴールを設定してそこに到達するためにどうすればいいかを考え抜くことにこそ価値があるのです」(長谷川氏)