「一見無駄なこと」が人々の購買意欲をそそる
今回紹介する書籍は『本能スイッチ』。編者は、何度も買いたくなる「仕組み」づくりをしたいという想いを持った博報堂の有志が集まって立ち上げた社内プロジェクトチーム、「博報堂ヒット習慣メーカーズ」です。
同チームは、マーケティング戦略から制作、リアルイベントからシステム開発まで、多様な専門性を持つ精鋭メンバーが揃った組織横断型のチームで、過去には微アルコール飲料のトレンドを作った「Asahi BEERY」の開発などにも携わっています。
本書では、そんな博報堂ヒット習慣メーカーズが普段の業務の中で発見し蓄積してきた、人を本能的に動かすスイッチの具体例を紹介しています。
世の中に数多の商品がある中で、自社の商品をいかに買い続けてもらうかは多くのマーケターにとって重要な課題です。本書ではその解決策の一つとして、本能に働きかける演出に着目。たとえば「歯磨き粉にミントの味がついている」といった一見すると論理的には無駄なことが、購買意欲をそそる演出であり、そのような「やってる感」(本能スイッチ)を組み込むことが重要だと主張しています。
習慣化を促す「やってる感」を5つに分類
そもそも、本能スイッチはなぜ購買意欲をそそるのでしょうか。本書では、生活者に何度も商品を使用してもらう条件として、習慣化されることが必要だと述べられています。
そしてその習慣化を促すうえで、商品の使用を本能的に自覚する、やってる感(=本能スイッチ)が必要だと語られているのです。
本能スイッチは本書において次の5つに分類にされており、生活の中で習慣化につながるような感覚を大別して紹介しています。
- ミント型
- コンフォート型
- ダム型
- アナログ型
- セレモニー型(P.13)
「ミント型」は使用することで刺激を与えるもの。「コンフォート型」は使用することで心地良さを感じるもの。「ダム型」は数値や成果が可視化されるもの。「アナログ型」はデジタルにあえて少しの不便さを加えて使っている感を演出するもの。「セレモニー型」は、過去に行ってきた決まった手順の行動を再現するものと説明されています。
成果を可視化して「やってる感」を演出
具体的には、どのような事例があるのでしょうか。ダム型の一例としては、サイクロン式掃除機が挙げられています。
サイクロン式が登場する以前の掃除機には紙パックが内蔵されていましたが、サイクロン式掃除機の場合、ダストカップにゴミが溜まるようになっています。当然性能面の変化もありますが、本書において着目するのは、掃除をするたびに溜まっていくほこりが可視化され、掃除をするだけで達成感を得られるようになったこと。この成果の可視化を本能スイッチの一つとして取り上げています。
「ゴミは汚いもの」として隠していた従来の掃除機から、「掃除をする楽しみ」を感じる掃除機へとゲームチェンジを起こしたわけです(P.97)
このように本書では、人々の習慣の一部になることができた商品やサービスを分析し、一見無駄に見えるが本能に響く演出の事例を紹介。エナジードリンクの色や、サウナのロウリュについてなど、日常生活に強く結びついている事例が豊富に取り上げられており、イメージしやすくなっています。
自社商品/サービスのLTV向上に取り組むマーケターの方は、一度目を通してみてはいかがでしょうか。
本記事はイースト・プレスからの献本に基づいて記事作成しております