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MarkeZine Day 2023 Spring

「kintone」「Airワーク 採用管理」の事例から学ぶ、BtoB企業の統合プロモーション戦略

プロモーション設計を見直し、「お試し」数を150%アップ

 セッションの後半では、データをどう活かして戦略を立てるかに及んだ。まずは山田氏から、過去の実績データをもとに契約にうまく結びついていない動きを理解し、コミュニケーション設計を変えた話が語られた。

 「kintone」の場合、サービス契約の前に無料で試せる「お試し」が重要なタッチポイントになる。しかしデータを見ると、認知目的のテレビCMから直接お試しを誘導しても思うようにCVを獲得できない、その後の契約数に結びつかないことがわかった。

 その原因が、サービス内容への理解度が低いままお試しをしていることで、「何をしていいかがわからない」状態をつくっている点にあると考え、コミュニケーション設計を改善することにしたという。

 具体的には、テレビCMで認知し、複数のコンテンツで興味理解を促し、理解度や熱量が上がったタイミングでお試ししてもらう流れへと変えていった。興味理解を高めるコンテンツは、ホワイトペーパーや動画、体験ツールなど。個人情報を入れずに閲覧できるコンテンツを多く用意したと山田氏は話す。

 このように、広告経由の「お試し」誘導を減らし、理解を深めるためのコンテンツ配信充実させたコミュニケーション設計に変えたところ、自然検索流入が増加。結果的にお試し数が150%伸長した。

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 また、先述した担当者の周辺メンバーへ認知活動することは、比較検討から契約までの社内稟議、契約後の継続浸透アップセルに役立っていることがデータから読み取れた。

「一緒に使うメンバーへの認知が与える影響を知ることができました。『kintone』のマーケティングにとって、非常に重要なポイントだと思います」(山田氏)

プロモーション評価は課題を整理することでポイントが見えてくる

 一方の市川氏は、データをどうつなげてプロモーションの評価をするかという、プロモーション担当者の積年の課題に対して語った。

 「大事なのは、最終アクションに対して因果が見えるようにする。それを実現するために、計測上どういう課題があるかを整理することが重要だと考えている」と市川氏。これは、どういうことなのだろうか。「Airワーク 採用管理」のテレビCMを例に市川氏は解説した。

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 ユーザーが、テレビCMを視聴しブランドクエリを検索、その後サイト訪問をしコンバージョンに至るプロセスにおいて、評価の課題はいくつか存在する。

 たとえば、検索時にその人が本当にテレビCMを見ているかが判別できないこと。サイト流入後だと、検索エンジン経由で来た人がアクションしても、それがブランドクエリなのか非ブランドクエリなのかがわからないため、ブランドクエリ側のプロモーションの評価ができないことなどがある。

 他にも課題は複数存在するはずだが、担当するプロダクトによっては考えなくていい課題も存在するという。

 「『Airワーク 採用管理』の場合は、サイト流入後検索エンジン経由で来た人がブランドクエリ、非ブランドクエリどちらか分からないという課題は、検索クエリの中身を見ると、大半がブランドクエリでできていることがわかるため、課題としての優先度は低いです。整理をすることで、解決すべき課題が明確になります。その後に、アクションまでつなげて因果が見える仕立てを考えることが重要なのです」(市川氏)

 さらに市川氏は、データを活用したPDCAの回し方として、クリエイティブ要件とテレビのバイイングの話にも触れた。大事なのは、仮説を立ててファクトデータをもとに要件を決めることにこだわること。「Airワーク 採用管理」の場合、テレビCMの訴求内容は、アンケートデータや事業のログデータ、定性のインタビュー調査やWebプロモーションの実績データなどをファクトデータとして使って決めている。

 テレビCMのメディアバイイングに関しても、テレビ局別実績データやターゲットの視聴率データから効率の良い枠を選定するだけではない。サイトの訪問データやデバイス別サイト訪問データからユーザーの視聴行動を想定し、「局×曜日×時間」でメディアバイイングを細かく設計。「プロモーションはデータ活用が難しい分野になるが、その中でもできる範囲で細かくデータを見て決めていくことが大事なのでは」と市川氏は話す。

 最後に双方のプロダクトの話から見えてきたのは、事業のサービス特徴に対して有料なのか無料なのか、検討期間があるかなどをよくつかむこと。必要なタイミングでそれぞれの人が想起しやすいようにクリエイティブに落とし込むことだと言える。

 「kintone」の場合、各経営陣やチームメンバーがやりたいと思える状況をつくれるようクリエイティブやコンテンツを用意し、優良リードへと育成すること。「Airワーク 採用管理」は、ニーズ発生時にとにかく素早く想起・行動してもらえるようなコミュニケーション設計だったと考えられることだとまとめ、同セッションは終了した。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/08/04 08:30 https://markezine.jp/article/detail/42109

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