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企業の取り組みから考えるインクルーシブデザイン

ダイバーシティで価値を作る、「インクルーシブデザイン」が注目されている理由とは

日本ならではのイノベーションのチャンスにも

 超高齢社会に突き進む日本においても高齢者や障害者、外国人労働者の増加といった社会的背景から多様なニーズが増え、日本で多様な社会課題を抱える人の割合は2035年には45%になると予測されています。

2035年には約45%——社会課題先進国・日本で多様な課題を抱える人の割合(重複除く・クリックすると拡大します)
2035年には約45%——社会課題先進国・日本で多様な課題を抱える人の割合(重複除く・クリックすると拡大します)

 この日本特有の状況はネガティブなことだけではありません。企業の新しいアイデアのきっかけになると考えられ、インクルーシブデザインによる新たな取り組みが今後も加速すると考えられます。

 一例として、様々なイノベーションの可能性を見出すことができます。

  • 高齢者にも圧倒的に使いやすいシンプルで利便性の高い遠隔医療サービス
  • 身体的・心理社会的な障害を持つ人々に対して利用が容易な業務システム
  • 国籍・年齢問わず旅行を楽しむことができるライドシェアリングサービス

 インクルーシブな製品・サービスを求める人々が年々増えている日本では、多様性が存在することを事業作りに取り入れることで大きなチャンスにつながります。価値を届けるユーザーを増やすだけでなく、超高齢社会に紐づく社会課題にもいち早く対応し、今後の社会に求められる製品・サービスを提供していくことも同時に可能になります。

 これらの取り組みを続けることで、社会価値と経済価値を両立・統合させたCSV的な事業アイデアも得られるようになります。さらに、これまでCSR活動や社会貢献活動が事業に紐付かなった会社において、事業を通したサステナビリティやSDGs、企業のビジョン・ミッション・パーパスを体現することが期待されます。

 著者が運営するデザインスタジオでは、独自に開発したインクルーシブデザインツールキットを使い、協力NPO団体の実際のリードユーザーの方と一緒に新たなアイデアや企画づくり、サービスの課題、改善点などを考えることができるワークショップを実施しています。このワークショップでは、D&Iに取り組む企業を対象に健常者だけでなく、高齢者・障害者・外国人など多様な人々の視点から課題を発見・アイデアを創出する考え方を体験することで、自分以外の多様な視点に気づきを得ることができます。

本連載にあたって

 自社の製品・サービスにおいてインクルーシブデザインを導入することで、より広範な顧客を取り込み、社会的な包摂性を高めることができます。行政だけでなく、個人や民間企業、団体にとっての責任として社会の包摂性を高めることが求められる中、多様性に目を向けて社会を捉える事業との関わりは非常に重要なことであると言えます。

 筆者はこれからの社会においてインクルーシブデザインが果たす役割や可能性を広く捉え、より多様なアイデアや視点から新しい可能性が拓かれ、社会全体がより豊かになることを期待しています。

 本連載では、これからインクルーシブデザインがイノベーション創発に貢献する企業を取材し、紹介していきたいと思います。この連載をきっかけに、将来の製品・サービスの開発に取り組む一歩を踏み出していただけましたら幸いです。

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この記事の著者

川合 俊輔(カワイ シュンスケ)

 株式会社STYZ Chief Design Officer 芝浦工業大学デザイン工学部卒。
 海外を拠点とするデザイン会社を経験した後、インクルーシブデザインスタジオ「CULUMU」を設立。多様なユーザー・生活者と共創するデザインプロジェクトを様々な業界・企業と取り組む。また、芝浦工業大学でUXデザイン演習等の非常勤講...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/09 21:05 https://markezine.jp/article/detail/42333

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