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イベントレポート

深津貴之氏が示す、AI時代にこそ身に着けておくべき“トレンドから本質を掴む”思考法

課題に対し、まず着手すべき“宇宙の法則”とは?

實川:深津さんは、様々なサービスを改善する仕事をされていますが、どのような思考法で取り組まれていますか?

深津:基本的には抽象レイヤーの話として考えるところからスタートし、業界独自の特殊なやり方で解決するのは最終手段です。まずは、業界に依存しない解決手段から着手すべきだと考えています。これを「“宇宙の法則”に近いものから着手する」と呼んでいます。

 逆に、その前の課題の抽出段階では、業界特有の要素である具象レイヤーの部分で徹底的に自分の手を動かします。「宇宙の法則に近いもののうち、この分野で使えるものは何か?」を、どんどん試し仕分けをしていきます。

實川:デザインとマーケティングの世界でいうなら、どんなものがありますか?

深津:最も“宇宙の法則”に近いものの一つに、「レスポンスの速さ」があります。アクションに対するレスポンスがすぐに返ってくると、人間は気持ちよく感じるようですね。これは商談でも、友情でも、ゲームの操作性でもそうです。こういった、業界に依らずにあてはまる要素から着手・改善することが大切だと思います。

 もう一つは「コミュニケーションコストの最小化」です。「雑に運用して、最高の成績が帰ってくる」ことを望むのも、“宇宙の法則”に近いんですよね。まずはそういった普遍的なところから取り組むようにしています。

 具体的なところだと、「操作する機能」と「操作しない機能」なら後者が優先です。Webサイトならば検索機能よりもリコメンデーションにまず投資すべきです。操作が必要な機能は、機能を発見・理解・予測・行動までしてようやく効果が発揮されます。一方、サイトに来訪しただけで発動したり課題を勝手に解決したりといった機能は、ユーザーのコミュニケーションコストが前者よりも少なく済みます。

AIによってライターは“ひとり編集長”へ

實川:生成AIにおいても、普遍的な部分に着手しながら抽象的に思考する能力を磨いていくべきだということでしょうか。

深津:そうですね。たとえば、アパレルのマーケティングをやる場合は「アパレルにおけるマーケティング特性」に影響を受ける方が多いと思います。実は、アパレルに特化したマーケティングナレッジは優先順位としては2位の話。そうではなく、アパレルを含むあらゆる業界に共通する項目を優先順位トップとして投資していくと、よいと思います。

實川:つい「うちの業界って特殊なんだよね」という台詞をいいがちですよね。最後に、AI時代のライターについて、展望について、深津さんはどのようにお考えですか?

深津:ライターの仕事は、ライティングそのものではなく“ひとり編集長”になる可能性が高いですね。人間が書いてAIが編集長をやるのか、その逆になるかはまだ不定ですが。人間とAIがペアになった場合、企画・執筆から編集・校閲までが一人の仕事として統合される可能性が高いと見ています。

 編集ではなく「編集長」と言った理由は、ライターが1作品ずつと密結合する可能性が少ないからです。一人のライターが多くのコンテンツを同時にこなす可能性を考えると、現職業の中では編集長が最も近いイメージですね。そうなると、今後は「一人1メディア」の時代になっていく可能性も高いと思います。

實川:すべてAIがこなすのではなく、人間とペアになって担当領域を広げていくということなんですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/14 08:00 https://markezine.jp/article/detail/42348

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