2023年5月18日、米data.aiの日本法人であるApp Annie Japanは、事業戦略説明会を開催。日本市場における事業戦略について、2月より日本事業責任者に就任した鳥井武志氏が説明した。
data.aiは、モバイルアプリの分析プラットフォームと市場のマーケットデータを提供している。同社は100万以上のアプリを分析し、世界193ヵ国以上のアプリに関連したデータを蓄積している。2022年2月には、米法人は社名を「data.ai」に変更。人工知能を駆使し、様々な統合データの提供を目指している。
同社の顧客がモバイル市場データを活用するパターンとして、鳥井氏は以下の5つを挙げた。
・自社アプリの戦略立案、運用改善
・新規事業、サービスの企画立案、実行
・営業企画、パートナーシップ
・海外展開やインバウンド関連の企画立案・実行
・経営企画、中期経営計画
ユーザーが1日にモバイルに費やす時間、初めて5時間を突破
次に鳥井氏は、2022年モバイル市場の概況について解説した。まず注目すべきポイントとして語ったのが、ユーザーが1日あたりにモバイルに費やす時間が初めて5時間を突破した点だ。
鳥居氏はこの利用時間のうち「WeChat・TikTok・YouTubeが約半分のシェアを占めている」と解説。またモバイル広告支出については、成長率の鈍化は見られるものの、3,620億ドルに達すると予測した。
アプリのダウンロード数は、前年比11%増の成長をしているが、アプリストアの支出額は前年比マイナス2%の成長と冷え込む結果となった。また、国別に消費者のアプリ支出額を見ていくと日本はTOP3に入っており、「アプリ市場において日本は重要な市場である」ことを鳥居氏は強調した。
非ゲームアプリへの消費支出が好調。「体験提供」がカギに
また2022年は日本国内でゲームアプリの消費者支出が減少する中、非ゲームアプリへの消費支出は可処分所得の3.2倍と好調を維持したと説明。
その要因として、コンサートやスポーツイベント、映画などのチケットを売買するチケットサービスアプリが、2022年のダウンロード数で前年比86%と最大の伸びとなっていることを挙げた。これに対し鳥居氏は「2023年は旅行・イベント・スポーツなどの体験提供に関する市場が伸びていくだろう」と語った。
モバイルアプリ経済圏の影響をAIで可視化
さらに鳥井氏は、製品ロードマップについて紹介した。
「デジタル市場データ製品」では、PC向けのソリューションを開発している。またデータを活用する企業の幅が広がっていることを受け、「ラーニングポータル」の提供を開始したという。
また既存事業責任者である矢野恵介氏が、分析機能である「ハイブリッド収益」を紹介。アプリにおいて収益化させる主な方法は、モバイル広告、有料アプリ、アプリ内課金、サブスクリプションだ。その中の7割弱がモバイル広告となっている。
こうした状況に矢野氏は、「AIの活用なしに、競合他社によるモバイルアプリ経済圏の影響を確認することは難しいです。レッドオーシャンとなっているアプリ市場で、以前から詳細な情報が必要だというお声をいただいていました。ハイブリッド収益はこうしたニーズから提供に至りました」と説明した。
ハイブリッド収益は、競合のアプリ内購入・競合の収益・競合の課金ユーザーリテンションおよびサブスクリプションを分析。結果は、「広告収益レポート」や「アプリ内課金行動レポート」の形で顧客に提供する。
同社は推計データを参考に分析を重ねることで、「広告収益レポート」において、マネタイズのカギとなる戦略を策定。また「アプリ内課金行動レポート」では、業界全体のアプリ内課金の原動力を探っていくという。
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