顧客に選ばれ続けるには「物語」を売れ
今回紹介する書籍は『ストーリーブランディング100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)。著者は、湘南ストーリーブランディング研究所の代表を務めるコピーライター・川上徹也氏。現在は広告制作や企業・団体・自治体などのブランディング支援、広告・広報アドバイザーとして活動する傍ら、マーケティングやブランディングに関わる著作を幾つも刊行されています。
情報化社会では顧客がより多くの選択肢を持つようになり、企業が良いものを作るだけでは選ばれ続けることが困難となっています。川上氏は、このような状況の中で顧客をリピーター化するためには、企業は「物語(ストーリー)」を売るべきだと主張しました。
では、「物語を売る」というのは一体どういうことなのでしょうか?
物語は、顧客の感情を刺激し記憶に残る
川上氏は、満足した顧客がそのサービスやプロダクトのリピーターになるとは限らないと指摘。その理由は、「強く印象に残らなかった」「忘れてしまった」からだといいます。顧客の満足体験をリピートにつなげるには、満足の上を行く「記憶に残る何か」を提供する必要があり、川上氏はそれが物語であると示しました。
物語について、本書では以下のように定義しています。
顧客、得意先、生活者、社員などに対して語ることで、聞き手や読み手の感情を刺激する、本当にあった(フィクションではない)エピソード
物語の目的は「人・商品・店・企業などのバリューを上げること」だと川上氏。顧客の心に強く働きかけることで、満足を超えリピーターや企業のファンになってもらえるのです。
物語を作るための「ストーリーの黄金律」とは?
川上氏によれば、ビジネスにおける物語は発見するもの。どんな商品・サービスあるいはBtoBのビジネスであっても、「物語の種」を発見すれば、独自性のある物語を育てることができます。
【物語の種】
・経営者や創業者の「生い立ち」「志」「理念」「キャラクター」
・従業員の接客方法
・オリジナルキャラクター
・ファンを育てるコミュニティ活動や社会貢献活動
上記にある物語の種を抽出したあとは、人が感情移入しやすく行動に駆り立てられる、「ストーリーの黄金律」を活用していきます。こうして「感動のツボ」を押す物語に磨いていくことが大切だと川上氏は解説しました。
【ストーリーの黄金律】
(1)何かが欠落している、もしくは欠落させられた主人公
(2)主人公が何としてもやり遂げようとする遠く険しい目標・ゴール
(3)乗り越えなければならない数多くの葛藤・障害・敵対するもの
要素(1)は、すべてが満たされた幸福な主人公より、何らかが満たされていない主人公のほうが人間は感情移入してしまいます。欠落の例として「資金不足」「顧客満足の低さ」「市場ニーズがわからない」「廃業の危機」など、足りないものや課題などが挙げられます。これにかなう要素を会社・商品・サービス・従業員などから洗い出し取り入れることで、顧客の感動のツボを押す物語になります。
本書では、他にも黄金律の要素(2)(3)や黄金律を活用した物語の組み立て方、物語の種の様々な見つけ方・育て方などを解説しています。自社を顧客に選ばれ続けるブランドにしたい方、顧客の心に強く届く訴求方法を検討している方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。