ロンドンにてアドビのデジタルエクスペリエンスカンファレンス「Adobe EMEA Summit 2023」が開幕した。
今回のサミットにおいて同社は、「顧客体験主導での事業成長」を大きなテーマに掲げた。
顧客体験の向上が、企業にとっての重要な差別化要因に
オープニングのキーノートで、同社デジタルエクスペリエンス事業部門責任者のアニール チャクラヴァーシー氏は「昨今のデジタルエコノミーにおいて、消費者は企業に対しより多くの体験を期待するようになってきている」と語る。
したがって企業は、各施策でパーソナライズされた適切な体験を顧客に提供していくことが求められている。「だからこそ企業は、顧客体験の向上を重要な差別化要因と捉え、注力していく必要がある」と同氏は参加者に呼び掛けた。
また同社の調査によると、マーケティングおよび顧客体験(CX)リーダーの88%が「コンテンツ需要は過去2年間で、少なくとも2倍になった」と回答。さらに約3分の2が「今後2年間でコンテンツ需要が5倍になる」と予想している。
そこでアドビは、急増するコンテンツ需要に対応し、インパクトのある顧客体験を提供できるよう、コンサルティング会社や広告代理店と提携。良質なコンテンツを大量かつ戦略的に制作していく仕組みである、コンテンツ サプライチェーン ソリューションを展開していくことを明らかにした。
「パーソナライズされたデジタル体験を通じて世界を変えることは、アドビの使命です。顧客体験の成長は、新規顧客の獲得・既存顧客との関係構築・エンゲージメントの深化といったあらゆるフェーズで、そしてすべてのチャネルとタッチポイントで実現できるのです」(チャクラヴァーシー氏)
AIこそ、新技術のフロンティア
デジタルによってあらゆる業界が成長している中、アドビの会長 兼 CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏は、コンテンツやアプリケーションの作成と消費が加速していることについて触れた。
「コンテンツに対する飽くなき要求が完全に爆発し、私たちの働き方やコラボレーションのあり方も大きく変化しています。それが人間同士であれ、テクノロジーとの関係であれ、クリエイティビティこそが、新しい生産性なのです」(ナラヤン氏)
続けて同氏は人工知能(AI)についても言及。「新しいフロンティア」だと表現し、その可能性について語った。
「AIは、既存のテクノロジーに革命を起こそうとしているのです。あらゆるものをより身近に、より手頃に、より楽しくする驚くべき副操縦士となりえます。
これらはクリエイターの創造性を拡大するだけではなく、プロフェッショナルのアクセラレータとして機能していく可能性を示しているのです。ビジネスの生産性とパーソナライゼーションを自動化していくことで、マーケターはより有意義な方法で顧客と関われるようになっていきます」(ナラヤン氏)
各種クラウドのアップデートや新サービスの提供などが発表された中、生成AI(ジェネレーティブAI)、特に「Adobe Firefly」がエンタープライズ向けソリューションとして提供されることに大きな注目が集まった。6月7日のキーノートで発表された主なトピックスは以下の通りだ。
Adobe Firefly、エンタープライズ向けに提供
同社は、急増するデジタルコンテンツの需要に対応するため、Adobe Fireflyを新しいエンタープライズ向けソリューションとして全世界に提供することを明らかにした。
Adobe Fireflyは、商用利用も可能なコンテンツを生み出す生成AI(ジェネレーティブAI) サービスだ。同サービスとAdobe Express エンタープライズ版を活用することで、ブランド価値の高いコンテンツを生成、編集、共有しやすくなる。またAdobe Fireflyは、企業が所有するブランド資産を使って企業に特化したトレーニングをすることで、ブランド独自のスタイルとブランド用語でコンテンツを生成できる。
さらに、エンタープライズ向け生成AI サービス「Adobe Sensei GenAI」がAdobe Customer Journey Analytics(顧客管理ソリューション)、Adobe Experience Manager(コンテンツ管理システム)、Adobe Marketo Engage(MAツール)から利用できるように。これにより生産性の向上や、パーソナライズされた顧客体験の提供がしやすくなった。
Adobe ExpressにAdobe Fireflyを搭載
加えてAdobe Express(デザインツール)にもAdobe Fireflyを搭載。言語で指示を出すことで、クリエイティブを作成できる機能が追加された。これによりアドビの写真、デザイン、ビデオ、ドキュメント作成ツール機能に加え、生成AI機能が備わるソリューションとなった。
Adobe Experience Platformの追加機能でDXを加速
アドビは、Adobe Experience PlatformにてAdobe Real-Time CDP、Adobe Journey Optimizer、Adobe Customer Journey Analyticsが相互接続されたことを明らかにした。今まで各機能でサイロ化されていたデータが相互接続されることで、パーソナライズされたインサイトとエンゲージメントの分析が可能となった。
また新しいグローバルパートナーとの連携と、高度なオーディエンス管理機能により、パーソナライゼーションキャンペーンの配信が加速。企業は、オーディエンスセグメントをAdobe Real-Time CDPに自動的に取り込めるようになったほか、統合型のガバナンス機能や、最も価値の高いセグメントを表示する機能などといった管理機能も追加された。
各種AI搭載の新機能がAdobe Experience Cloudアプリケーションに投入
同社は「Adobe Product Analytics」の提供を発表した。同サービスはAdobe Experience CloudのアプリケーションであるCustomer Journey Analyticsの一部。製品チームのメンバー自身が、顧客の製品導入や利用状況をセルフサーブで調査可能に。具体的には、製品チームが顧客の製品導入や利用状況を把握できる。
加えて、Adobe Mix Modeler(プランニング支援ツール)とAdobe Experience Manager(コンテンツ管理システム)の提供をグローバルに拡大するほか、Adobe Journey Optimizer(パーソナライズ最適化ツール)へAI機能を搭載したことも発表した。
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