2022年度の消費者・事業者からの苦情・照会件数は約1万2,030件
説明会の冒頭、日本広告審査機構(JARO)で事務局長を務める川名氏が2022年度の広告審査の結果を報告する。JAROとは公正な広告活動の推進を目的に、1974年に設立された公益社団法人。消費者から広告表示に対する意見や苦情を受け付け、広告主に改善を促すなどの活動を行っている。
川名氏によると、2022年度の広告表示に関する消費者・事業者からの苦情や照会などの受付件数は約1万2,030件で、前年度比87.4%と1割余り減少した。
「コロナ禍の不安や巣ごもり需要にともなうメディア接触時間の増加により、2020年度には過去最高の1万5,100件を記録しましたが、ここ2年間で若干減少傾向にあり、コロナ禍前の水準に戻った印象です」(川名氏)
苦情の中身を業種別で分析した結果、「医薬部外品(510件)」が最多に。2番目以降に「化粧品(446件)」「健康食品(334件)」が続いた。
また、媒体別で見ると「テレビ(4,044件)」が最も多く、僅差で「インターネット(4,001件)」が続いた。
「2019年度以降、インターネット広告のほうが苦情件数は上回っていましたが、2020年度をピークに減少しています。同時にテレビ広告に対する苦情件数も減ってはいるのですが、今回はインターネット広告の減少幅のほうが大きかったため、テレビCMへの苦情件数が最も多くなりました」(川名氏)
さらに川名氏は、2022年度に集まったインターネット広告の苦情について、その特徴を次のように語る。
「『化粧品』と『オンラインゲーム』に対する苦情件数の減少が特徴として挙げられます。表示内容では、『歯の黄ばみが取れる』といった内容や不快な画像が含まれる広告への苦情が減少傾向にあります」(川名氏)
サブスク風に見せて実際は高額請求するという罠
消費者から寄せられた約1万2,030件の苦情・照会のうち、JAROは26件(前年度は30件)に関して「見解(※)」を発表している。
※JAROでは、消費者からの苦情に対して、影響度合いが大きいものに関しては見解を発表し、相談者や広告主などに通知を出している。なお、見解の種類には程度の大きい順に「厳重警告」「警告」「要望」「助言」がある
26件の見解の種類を業種・媒体別で見ると、業種では「化粧品(5件)」が最も多く、媒体では「インターネット(21件)」が最多だった。
さらに、2022年度の特徴として、川名氏は「広告表示以外にも、複雑な契約内容が苦情の原因になっている」と指摘する。たとえば、男性用脱毛エステサービスで「費用は月々1,000円程度、最短2回」と強調された広告があるとしよう。しかし、実際には高額なコース契約で「36回の分割払いを選べば、1回の支払額が1,000円程度になる」という仕組みだったケースだ。
本来、広告主が「月額〇〇円」などと広告に記載する場合には、手数料などを含めた支払いの総額や支払いの期間・回数、手数料の料率なども表示しなければならないという。記載を怠ると、景品表示法や割賦販売法などに抵触する恐れがある。
「『月額〇〇円』といったような、安価で短期的なサービス、いわゆる『サブスクリプションサービス』が急速に普及していますが、実際にはサブスクリプションではないにもかかわらず、そのように誤認させる広告表示が増えているのです」(川名氏)