広告費の健全化に向けアドフラウド対策に注力
──まず森様の簡単なご経歴や現職の業務やミッションについてお聞かせください。
KDDIに新卒入社し、2年目からはDeNAへ出向するなどして、元々は事業領域をメインで携わってきました。KDDIに帰任後は一転、宣伝領域でマスのメディアバイイングを長らく担当しました。現在はデジタル広告を駆使した加入のプロモーションを行うほか、社内公認でYouTubeチャンネル「ひみつ基地。」に時々出演しており、いずれも当社のサービスと興味があるお客様をつなぐ役割を担っています。
──ありがとうございます。主にデジタル広告に携わられているということで、年々深刻化しているアドフラウド問題についてうかがいます。御社では業界が直面する課題としてアドフラウドの対策に注力しているそうですね。昨今のアドフラウドの現状に対し、広告主企業が抱えるリスクにはどんなものがあるとお考えですか。
レポートが出てきて通知がくるままに広告費を支払っていても、支払った金額に対して、本当に正しくクリックされたかがわからないことは大きなリスクだと考えています。不正なクリックにより、余計な広告費が発生している可能性がありますし、その不正な広告費が犯罪収益につながってしまうとも言われています。これは、コンプライアンス面で見ても良くないことは明白ではないでしょうか。
このようにアドフラウドによるリスクは大きいものの、対策になかなか取り組めない広告主企業も多いのではないかと感じています。
広告主企業として「見えないものにコストはかけにくい」
──アドフラウド被害の放置にはそれだけのリスクがあるにも関わらず、対策に踏み出せない広告主企業が多いのはなぜだと思いますか?
まず、アドフラウドは媒体側が対策しているものであり、広告主にはあまり関係ない課題と認識してしまっている可能性が理由の一つかもしれません。媒体社が媒体をクリーンなものにする責任があるのではないかと思っている企業は少なくないと思います。実際、以前は私達もそのように考えていました。
加えて、アドフラウドについて調べようとしても得られる情報が限られているのも要因と考えられます。幅広い対策をしようとして、広告の健全性を検証する手法全般を指すアドベリフィケーションを調べていても、ブランドセーフティ、ビューアビリティなどアドフラウド以外の視点のほうが話題になることが多いと感じています。
また、「見えないものに対しては、コストをかけにくい」というマーケターや経営者側の本音も要因としてあると思います。アドフラウド対策により、具体的に改善した部分が視覚化されていないと、たとえ対策をしたいと考えても社内の承認を得ることは難しいですね。
これは私がマスのメディアプランニングを担当していたころ、テレビの視聴率と向き合っていたことに重なります。リモコンの集計による従来の視聴率ではCMが本当に見られているかを測定はできないため、「見えるようで見えない指標」と言えます。そこでテレビにセンサーを備えたパネルを活用して、実際にテレビの前の人が画面を見ていることを検知したデータを掛け合わせた「視聴質」という概念を作り、視聴率を「見える指標」にしました。そんな経験もあり、「メディアを“見える化”したい」という想いを常に持ってきました。届けたい広告を正しく届けられているか。このようなことをデジタルの世界で改めて見直したいと思っていたときに出会ったのがCHEQの「Customer Acquisition Security」です。アドフラウドを「見える不正クリック」にできることを知って2022年4月に導入し、現在にいたります。