2020年は変化を捉えたクイックな商品開発、デジタル施策に注力
──2020年に起きた変化に対し、資生堂ではどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。
まず取り組んだのは、急速な生活者ニーズの変化に対応した商品の開発です。マキアージュでは、急遽プロジェクト体制で開発を進め、マスクにつきにくい「ドラマティックヌードジェリーBB」を、企画からわずか4ヵ月という期間で発売しヒットしました。

肌トラブルに対応するイハダや、自宅でまつ毛のケアができるマジョリカマジョルカのまつげ美容液などもデジタル中心のマーケティングにより売上を伸長させました。
また、外出機会が減り、美容に関する情報源が圧倒的にデジタルにシフトする中で、商品開発だけでなくデジタル施策にもそれまで以上に注力しました。リモートワークの機会が多くなった方向けに、カメラアプリ用のARフィルターを提供し、マキアージュのメイクをしたイメージを体験し楽しんでいただくことで、接点の拡大を狙いました。
さらに、資生堂の美容部員、パーソナルビューティーパートナー(以下、PBP)も緊急事態宣言による店頭での応対時間の制限がありましたが、その中でも商品や美容、メイクの方法を生活者に直接お届けしたいという想いを持っていたため、急遽インフルエンサーの方から直接SNS投稿のノウハウについて学ぶ研修を実施し、PBPがInstagramアカウントから美容情報の発信をできる体制を整えました。
資生堂では、PBPによる店頭での応対を強みとしてきましたが、美容の知識やノウハウをSNS上でも発揮して、多くのフォローをいただき、ファンとつながることができました。デジタル化が加速した2020年ですが、化粧品の選び方もテレビCMや店頭カウンセリングよりSNSを重視する動きが強まりました。社員のインフルエンサー化はハードルも高く、組織的に行うのは大変でしたが、取り組んでよかったです。
2021年以降は「上手に楽しむ」が重要に
──ここまで2020年の変化と対応をお話しいただきましたが、2021年から2022年にかけての変化はいかがでしょうか。
2021年になると、マスク着用の生活が当たり前となり、マスクをしながらもメイクを楽しみたい、この機会に自分に合ったスキンケアで根本から肌を美しくしたい、という方が増加していきました。
ビューティーインテリジェンスチームでは「上手に楽しむ」という予測を立てていました。その予測に対応するため、資生堂ではマスクの色に合わせて楽しむアイメイクなどの情報発信強化や肌測定サービス「肌パシャ」の接点拡大、会員サービス「BeautyKey」の提供など、一人一人に合った美容・化粧に出会っていただくサービスの展開を強化してきました。
これらの取り組みの結果、2022年はコロナ収束への期待とともに、マスクを外す日に備えて、しわを改善するエリクシールのリンクルクリームや「美のめぐり」を整える「SHISEIDOアルティミューン」などのエイジングケア商品の売上が回復してきました。