※本記事は、2023年7月刊行の『MarkeZine』(雑誌)91号に掲載したものです。
【特集】転換期に商機を見出す
─ ライフ起点でトレンドを読み解く アクセンチュアが考える2023年の商機とは
─ 資生堂に聞く、化粧品に対する生活者意識の変化とその対応
─ コロナ禍で追い風を受けて業績急回復中 老若男女の需要をつかむ、ミスタードーナツ
─ 店舗とECを自然とクロスで考えられる環境になった アイスタイルに聞く、@cosme成長の秘訣(本記事)
─ 訪日増が期待できる東南アジア インバウンドで商機を見出すには?
─ 調査データから重要なインサイトを見つけ、商機をつかむことはできるのか?
リアル店舗とEC、それぞれの強みを磨く
──2020年から現在まで、どのようなマーケティング戦略のもとでビジネスを展開されてきましたか? 以前から変わらない部分と、コロナ流行期において急遽変更が起きた部分、また規制解除に応じての変化について教えてください。
大前提として、化粧品のマーケットではリアルが大事にされてきました。流通シェアも大きいですし、ブランドとお客様とのコミュニケーション接点としても重要です。@cosmeでも店舗のボリュームが圧倒的に大きく、ECが少しずつ成長してきた流れがあります。
一方、ECも2020年の段階でプチプラから百貨店ブランドまで、幅広いラインアップを揃えていました。ですから、コロナの流行でECの需要が急増した際にも、ニーズに応えるキャパシティを持っていました。加えて、リアル流通しか展開していなかったブランドからの相談もいただき、受け皿になりました。
また、同時期に「@cosmeだと安心だよね」というお客様の声が増えました。元々、口コミが集まり、直接ブランドと取引しているので信頼関係を築けていたのだと思います。行動が制限されてオンラインの情報が多すぎる中で、安心と信頼を求めて選ばれた。この点を大切にしていこうと考えました。
店舗スタッフについても、以前からいかにオンラインでコミュニケーションを取るかを考えたり、ECをお勧めするコミュニケーションを取ってもらったりする環境作りに努めてきました。そのため、2021年には「教えて!美容部員さん」という@cosmeSTORE/TOKYOの美容部員によるコンテンツや、ブランドのオンライン体験会など、店舗発のオンラインの取り組みも生まれました。教えて!美容部員さんは、現在、平均視聴者数5,000名を超えるライブコマースに成長し、ブランドから美容部員へ出演依頼をいただけるまでになりました。
@cosmeはブランドや化粧品とお客様の出会いの場を提供することが第一で、店舗・EC、自社流通以外も含めてどこで買ってもらっても構わないという考えです。一方で、もちろん店舗スタッフは来店されたお客様への買い物体験の提供をまず大切にしてくれます。一度、半強制的にオンラインに向き合ったことで、オフラインとオンラインをクロスで自然と考えられるようにアップデートされたと言えるかもしれません。
2023年からは店舗がより活性化していくかと思いますが、オフラインとオンラインの区別はせず、信頼の積み重ねを続けていきたいです。一方、オンラインとオフラインの強みも明確になってきました。それぞれの長所を磨いていきたいと思います。
──オンとオフでは、どのような強みがあるのでしょうか?
オンラインの場合、お客様は情報を吟味して冷静にお買い物をします。店舗は出会いや雰囲気、コミュニケーションを通して醸成される気持ちが購買の後押しになります。ECでもリアル店舗のようなわくわくを作りたいと考えていた時期もありましたが、ECと店舗のワクワク感の作り方は違うかなと。LTVが高いECでは何度も使いたくなる仕組み作りを磨き、店舗ではその場の楽しさをいかに演出できるかを磨きたいですね。
また、お客様もオンラインとオフラインを使い分けていると感じています。2018年から@cosme BEAUTY DAYと@cosme SPECIAL WEEKという大きなイベントを開催していますが、2022年12月に実施したBEAUTY DAYでは、店舗でECも見ながら、どちらで買うか決めているお客様の姿が多く見られました。慣れている方だと、店舗決済で即時付与されたポイントを使って、その後ECでもお買い物をされていました。各タッチポイントの長所を磨くことで、そのようなお客様に多くの機会を提供していきたいです。