※本記事は、2023年7月刊行の『MarkeZine』(雑誌)91号に掲載したものです。
【特集】転換期に商機を見出す
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─ 資生堂に聞く、化粧品に対する生活者意識の変化とその対応
─ コロナ禍で追い風を受けて業績急回復中 老若男女の需要をつかむ、ミスタードーナツ
─ 店舗とECを自然とクロスで考えられる環境になった アイスタイルに聞く、@cosme成長の秘訣
─ 訪日増が期待できる東南アジア インバウンドで商機を見出すには?
─ 調査データから重要なインサイトを見つけ、商機をつかむことはできるのか?(本記事)
調査データから重要なインサイトにたどり着くには
Q:調査データから商機(重要なインサイト)にたどり着くことはできますか? また、調査データにある特異値は、重要なインサイトとなり得るのでしょうか?
A:「定性データあるいは定量的なビッグデータをもとに、これから何が流行るかの予測を立てることはできますか?」という質問を時々受けることがあります。先に結論をお話しすると、「それは無理でしょう」といつもお答えするのですが、商機をつかむきっかけになる情報は得ることができます。
たとえば、N1分析を行うと、しばしば突飛な情報が出てくることがありますよね。ここでは、仮に「缶ビールを冷凍庫で凍らせて飲んでいるが、たまに缶を爆発させてしまう」というN1の声があがってきたとしましょう。このとき、「そんなことをする人もいるのか⁉」と単なるイレギュラーで済ませてしまうのではなく、「氷点下くらいキンキンに冷えたビールを飲みたいのですね。どんなときに飲みたくなりますか?」と、次の定量・定性調査を検討する情報として捉えるようにします。
突飛な行動をするのには何かしらの理由があるはずで、そこに眠っているインサイトを見つけることが重要なのです。突飛な行動の裏に隠れているインサイトや、比較的新しい消費者の欲求を言語化できたら、そのインサイトの有効性を定量調査で分析します。過去の経験上、インサイトに共感する人のノルム値(比較の指標となる基準)が大体60%を超えたら、汎用性がある良いインサイトだと判断することが多いです。
ただ、この定量分析には1つコツがあって、共感性×目新しさの2軸で分析してみると良いと思います。というのも、共感性と目新しさは基本的に負の相反関係にあって、つまり共感性の高いものは目新しさに欠けることが多いからです。商機をつかむという点を踏まえると、共感性だけでなく“目新しさ”という要素も重要になるでしょう。