色は“自分らしさ”の発露 ジェンダーレス、シーンレスに好きな色を選択する時代に
さて、ここからが本題です。ここまでで見えてきた「マジョリティに迎合するより、自分らしい生き方を追求したい」という生活者の意識傾向ですが、外見意識に関しても同じことが言えるのでしょうか?
その取っ掛かりとして、美容やファッションに関して「他者へのアピールというよりも、自分のために行っている」と回答した人は全体で56%、女性は男性よりも割合が高く69.3%という結果に。女性はすべての年代で6割を超える結果となりました。

ならば、「生活者は、外見でどんな“自分らしさ”を発露しているのか」が気になるところです。筆者は、真っ先に「色」に関する意識の広がりが思い浮かびました。わかりやすく具体例を挙げてみます。
ファッション
・ファッションでは、黒、白、グレーなどの無彩色やネイビーなどのいわゆる定番カラーだけでなく、「パープル」や「グリーン」などの中性色の人気が定着
・子供のランドセルは、男子は「黒」、女子は「赤」から、「ライムグリーン」や「ラベンダー」「ベージュ」など様々な色が登場

メイク・ヘア
・メイクアップでは、ネオンカラー(蛍光色)や白のアイライナーなど、従来のメイクの既成概念を超えるカラーが登場。
・ヘアカラーでは、インナーカラーで鮮やかな差し色を楽しむことがトレンドに
・メンズメイク、メンズネイルで、男性もファンデーションカラーやネイルを楽しむ時代に



家電・耐久財
・従来クルマらしいとされていた色ではなく、クールグレーカーキやアーバンカーキといった「くすみカラー」の車体色が人気に
・アラジン、BRUNOなど、インテリアにマッチする淡色家電ブランドが定番化


あるある!と思っていただけた方も多いのではないかと思います。これらに共通して言えるのは、従来の既成概念や社会通念の枠にとらわれない、豊富なカラーバリエーションです。
近年では、RGB値を自由に調節して色を作ったり、カラーコードで使用している色を把握・共有したりすることが一般化されてきました。動画技術やサービスの進化により、生活者が“色”そのものに興味を持つ機会がそもそも増えているように思います。消費の場面においても、希望するネイルデザインの写真を見せると、それと限りなく近い色に調合してもらえるネイルサロンもありますし、KATEの「リップモンスター」では複数のカラーを合わせて使用し自分好みのカラーを見つける「ミックスモンスター」が話題になっていました。また、ジェンダーレスが叫ばれる時代、男性らしい色/女性らしい色といった暗黙のルールもなくなりつつあります。総じて、生活者は旧来的な常識から解き放たれ、自分なりのこだわりをもって“色”を楽しむようになりました。
本記事では、若年層・Z世代に限らず全年代で見られる傾向として推察を進めていますが、カラーブランディングの変化については『Z世代が好む「くすみ系カラー」を因数分解すると?Z世代の“買いたい”気持ちを作るカラーパレットを公開』というMarkeZineの記事でも紹介されていました。

トレンドより「自分に似合っていること」を重視、パーソナライズ意向は顕在化
外見における「色」へのこだわりと言えば、「メイク」の分野があります。そこで、今春の「心が動く消費調査」では、メイクアップに関する以下のような項目を聴取してみました。
・口紅やアイシャドウを選ぶ際、自分の肌や顔立ちに似合う色を選ぶのは難しい?
・口紅やアイシャドウを選ぶ際、欲しい色味にぴったり一致する商品を見つけるのは難しい?
結果を見ると、女性の半数以上が「口紅やアイシャドウを選ぶ際、肌や顔立ちに似合う色を選ぶのが難しい」「口紅やアイシャドウを選ぶ際、欲しい色味にぴったり一致する商品を見つけるのは難しい」と回答しています。
自分に似合う色の選定や、イメージに合致する色の選定に難しさを感じているようです。特に女性・20代と女性・30代はtopboxが2割以上と高く、top2boxでも6割を超える結果となっています。

そこで、具体的に生声を聞いてみるべく、「口紅やアイシャドウを選ぶ際のお困りごと」というテーマで、20代・30代の女性を対象に簡易調査を行いました。48人の方が有効回答されたのですが、うち約半数以上の27人の方が「自分に似合う色がわからない」「好きな色と似合う色は違う」「自分の顔の種類と色合いが合っているかわからない」など、「自分に似合う色」に関する悩みを挙げられていました。
口紅やアイシャドウを選ぶ際のお困りごとアンサー抜粋
・自分に似合う色がどの色なのかわからず悩んでしまう
・好きな色ではあっても、自分に本当に似合う色なのかわからないことがある
・かわいいと思って購入しても、自分に似合わなかったりする
・パーソナルカラーに合っているかどうか気になる
・自分がイエベなのかブルベなのかわからないので、かわいいと思って購入しても自分に似合わなかったりする
・自分がイエベであることはわかっているが、春か秋かまではわからない
・人気の色はInstagramなどで紹介されているが、果たしてその人気色が自分に似合うのかわからない
・本当はかわいい!欲しい!と思うものを使いたいが、好きではなくても、自分に似合うもののほうが良い
人気の色や好きな色よりも、「自分に似合う色」であることが重要と考えている生活者心理が浮かび上がってきます。ここでは、スキンケアではなく、メイクアップに特化した質問になっているものの、「自分に似合う」を追求するという意味で、パーソナライズサービスへの意向は高まっていると言えそうです。