マーケターが生成AIに指示を出す際のポイントは?
ではマーケターが生成AIを活用し、指示をする際、どういった点に気をつければいいのだろうか。この点についてアフジャ氏は2つのポイントを挙げた。
1つ目のポイントは、何をしようとしているのか、はっきりと示すことだ。生成AIは様々なアイデアを出せる訳だが、ゴールのイメージがないまま指示を受けると、精度の高い回答が出せない。ブランドにとって意味のある回答を出すためにも、理想的なイメージを伝えることが生成AIとの上手な付き合い方となるようだ。
2つ目のポイントは、ブランドが今まで培っていた文脈を生成AIに理解させることだ。ブランドのもつ「文脈=らしさ」を生成AIが学習することで、マーケターの出す指示に対し、前提や文脈を理解した上でアウトプットできる。生成AIは確からしい答えを導き出すことはできるが、ブランドにとって意味のあるアウトプットにするためには、このステップは欠かせないものとなってくる。

生成AIを用いる上での、アドビの独自戦略とは
また、アドビが他の生成AIとどのように差別化をしているかについてアフジャ氏は、使い慣れたワークフローの中に、生成AIを溶け込ませている点を挙げた。
「PhotoshopやAdobe Express、Adobe Experience Managerなどもそうですが、これらはマーケターが既に親しんでいる一般的なアプリケーションです。それらに生成AIを組み込むことで、マーケターが自然に生成AIを使える状態にしたいと我々は考えています」(アフジャ氏)
アドビの生成AIには、テキストベースの体験の生成と変更に特化したAIサービスである「Adobe Sensei GenAI」と、画像やベクター・ビデオ・3Dを生成できる「Adobe Firefly」がある。
Adobe Sensei GenAIは、Adobe Fireflyを含む複数のGen AIなどを活用したAI技術サービスの総称で、Microsoft Azure OpenAI Service(Chat-GPT)やFlan-T5なども利用して、Adobe Experience Cloudの顧客管理ソリューションであるAdobe Customer Journey Analyticsや、コンテンツ管理システムのAdobe Experience Manager、パーソナライズ最適化ツールのAdobe Journey Optimizer、MAツールであるAdobe Marketo Engageといった各アプリケーションに搭載されている。
また、Adobe FireflyはAdobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloud Adobe Express内のワークフローに搭載。2023年9月には、Adobe Fireflyエンタープライズ版が提供されている。
いずれもAIをマーケターやクリエイターの副操縦士として、今までのアプリケーションに溶け込ませる形で搭載していっていることがうかがえる。
「生成AIは、今まで時間がかかっていたものを自動化することができるソリューションです。これによりマーケターが元々持っている能力を、得意な場面で存分に使えるようになります。だから生成AIは存在していると言っても過言ではありません。空いた時間は顧客と向き合い、顧客体験を充実させるために活用いただければと考えています」(アフジャ氏)