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花王廣澤氏が若手視点で聞く、これまでとこれからのマーケティング

俳優・AGRIKO代表の小林涼子さんに学ぶ、社会課題起点で価値提案につなげる方法

AGRIKOが今後乗り越えたい課題とは?

廣澤:今後AGRIKOの事業を推進、拡大していくにあたって課題となる部分を教えてください。

小林:急激に変化する天候にどう対応していくかが大きな課題だと思っています。今後天候が荒れて作物が育たず、食糧不足になるという事態が起こりうるので、どんな天候でも安定生産できる方法を探る必要があります。

 やはり農地の土や水って偉大で、その環境をビルで同じように再現するのは難しい。農地によって生産できる農産物の種類や味、大きさが違うのは農業ならではの魅力であり、一番難しい点でもあります。しかし、いずれ来るかもしれない食糧危機に対応できるようなどこでも生産できるシステムも必要だし、AGRIKOではその開発に取り組んでいくべきだと感じています。

廣澤:農福連携に関してはいかがですか。

小林:障がい者の方たちが働き続けられる環境作りが大きな課題となっています。親御さんがいなくなっても変わらない生活を維持していくサポートが今後必要になってきます。AGRIKOでも様々な方々や組織と連携しながらサポートの形を考えているところです。

できないことは数えない。頑張るより楽しむ

廣澤:最後に小林さんの同世代、あるいは若手のビジネスパーソンへエールの言葉をいただけますか。

小林:できないことは数えない、頑張るより楽しむの2つですね。できないことを挙げたらキリがないですし、特にベンチャーでは資金、時間、人すべてが足りません。俳優業、起業両方に言えることですが、まずはできることからやっていくようにしています。

 2つ目は、頑張りすぎると疲れちゃって持続できないので、楽しめるということが大切だと思っています。

廣澤:2つ目の頑張るより楽しむは、ビジネスも持続可能がコアにあるからこその考え方ですね。今回の対談でキャリアからAGRIKOの事業まで広くお話をお伺いし、ビジネスやマーケティングの観点では特に2つの点が示唆的だったように思います。

 1つは、前編でも触れた「エフェクチュエーション(Sarasvathy, 2008)」という思考様式を実践されていることです。小林さんは俳優という仕事、つまり、いま自分ができることを実践しながら、同時にできることを増やし続けなければならない環境の中でこのような思考様式が培われたのではないかと感じます。

 2つ目は、事業の核の部分はご家族のような強いつながりの影響を受けつつも、事業の具現化や拡大においては様々な知人の力を借りていることです。このように、家族のような密接な関係ではなく、ちょっとした知り合いとのつながりが、情報の伝搬や交換を活性化させることを社会学理論で「弱い紐帯(つながり)の強さ:The strength of weak ties」と呼びます(Granovetter, 1973)。これも、俳優やモデルの仕事を通じて多様なジャンルの方々とつながっているからこそ得られている強みのように思います。

 昨今、エフェクチュエーションや弱い紐帯の強さは企業規模に関係なく注目されている理論です。小林さんのように多様かつ特殊な経験を持っている方のお話や、理論のレンズを通したモノの見方が、日々、新たな価値提案を求められるマーケティング従事者にとって新たな気づきにつながっていると幸いです。

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/15 08:00 https://markezine.jp/article/detail/43087

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